​母と私の話12


パーキンソン病に現れる幻覚
妄想についてお話します。


母は常に幻覚、妄想と戦っていた。

庭に薙刀を持った男の人が怖くて
雨戸を閉めて部屋を
真っ暗にしていたことも…


ある時、
私が仕事をしていると
警察から電話がかかってきた。


『警察です』
『あなたのお母さんが通報した為、
あなたの家に来ています。』
『戻ってきてもらえませんか?』



『えっ?』
『電話は隠していたのになんで…』


母は110番して…
『家に強盗が入ってきて、
娘を床下に連れていき、
娘が閉じ込められている』と

娘の危機に無我夢中で
電話を探したんだろう…


『本当にすみません。』
『あと1時間で訪問のお医者さんが
来るのでそのまま
帰ってもらえませんか?』


『このままお母さんを
1人にすることは出来ません。』
『私たちは帰りますが
若い警察官を1人置いていきます』



私は至急
実家に帰らないといけない為、
支店長にお願いした。

『車を貸して頂きたい』と

支店長の答えは…

『私用で貸すことはできない。
公共の乗り物かタクシーで行ってくれ』


『あぁぁ…なるほど…』


私はうなだれた

腹が立つなどの感情はなく
ただただうなだれた…



〈次回に続く…〉