4月1日入行式
当時、
リクルートスーツなんて存在しない。
女性は各々キレイ目な服を着る。
入行式当日に配属先が張り出され
支店ごとに座らされた。
周りを見渡すと
同じ支店の同期は5人
男性2人、女性3人
大卒3人、短卒1人、と私(高卒)
みんな大人に見えた。
頭取の話を聞きひと通り終わると
お弁当が出た。
豪華なお弁当だったが
ソワソワしていて味も中身も
覚えていない。
保護者も出席が出来たため、
母は
『銀行内部に入れるなんて
こんなチャンス滅多にない』
と喜んで参列していた。
母は
豪華なお弁当に感動したらしい。
入行式が終わり同じ支店の男性が
指揮をとった。
『支店に挨拶に行こう』
私には何の選択肢もなく
ただ、ついて行くのみ。
『お土産いるかな』
『3時以降がいいかな』
なんて同期の大人たちが話している。
その後
配属の支店へ行ったが
バタバタしていてずいぶんと待たされた。
挨拶を済ませ
夕方になってようやく解放。
でも、
私は次の日から出勤する為
良い予行演習になった。
ちなみに、
他の4人は研修に入って
私だけが出勤となっていた。
彼らは1週間毎に研修に行き
4月の大半いなかった。
ひとりぼっちの私は
次々と仕事を教えてもらい
大卒の人たちが研修で戻ってくると
会議室で座学。
座学では
次長からこんな質問をされた。
『何故当行を選びましたか?』
大卒の大人たちは賢そうな、
いかにも面接の為に用意した
言葉を並べていた。
最後の私は特に言うことがない…
本当の事を言っても面白くないし…
『んーーーー』
『強いて言えば看板が青くてキレイ』
次長も同期も爆笑。
同期たちがいない間、だんだんと
戦力となっていった私は
同期と座学をせず、ひとり仕事に
下ろさせることが増えていき
新入生が全員休む
ゴールデンウィークも
働くことになった。
その時
ドンドン仕事を覚えて
仕事ができる環境があって
みんなの役に立つことが
とにかく嬉しかった。