​真夜中

窓の外から呼ばれた。

『行かなきゃ』
『わたしを呼んでる』
『行かなきゃ』

起き上がりカーテンを開けて
窓の外を見る。

横に長いオレンジの光が
煌々と輝いていた。

その光は少し遠くに見えた。

『あの光が呼んでる』
『あの光にいかないと』

窓の鍵を開けた。

そして窓を開け
外に出ようとした瞬間
パチンっという音と
ふくらはぎに痛みを覚えて
振り返る。

母は
上体を起き上がらせて
わたしのふくらはぎを叩いた。

『寝ぼけてるの?』
『トイレなの?』

立て続けに質問をした。

わたしは、ハッとした。
母が隣に寝ている姿は
見えていなかった。

『いや、違う』
とだけ言って布団に潜り込んだ。

次の日の朝、
母は夜中の出来事を聞いてきた。

『覚えてる?』
『なんだったの?』

なぜか何も言いたくない。

『覚えてるけどね…』
だけ言った。


実際。。
窓の外は隣の家の壁
その時、隣の家は全く見えていない。

ただただ、とてもキレイな
オレンジの光が細長く輝いていた。