【男性高齢者 妻遺体放置事件】
地域とつながり薄く孤立 「助けて」言えぬ
遺体を放置したとして、死体遺棄の疑いで同居していた夫、元公務員(82)が1月に逮捕された。妻は足が不自由だった
約半年にわたり周囲に気付かれなかった妻の死。背景の一つに夫の「孤立」があったとされる。
青や緑、ピンクなどカラフルな壁の家が並ぶ住宅街。
その家も明るい色をまとっていた。
家を囲うブロックや木の柵は崩れ、屋根のビニールが破れたガレージには空き缶やペットボトル、壊れた傘が散乱。そこだけ時間の流れが止まっているようだった。
夫は「昨年7月に妻が亡くなり、そのままにしていた」などと供述。
遺体は腐敗して一部が白骨化。
捜査関係者は「親戚とは疎遠だったようだ。年に一度、会いに来ればいい方なくらい」と話す。
事件の発覚は1月19日午後。夫婦の家を訪ねた親戚が、居間に横たわっている妻の遺体を発見した。
「明るい感じでしっかり受け答えをしてくれる普通の夫婦だった」と振り返る。
2017年1月現在の県内の高齢化率は30%。
高齢化に拍車が掛かる中、男性高齢者は女性よりも孤立しがちだ。
17年版の高齢社会白書では、居住する地域での付き合いについて「あまり付き合っていない」と「全く付き合ってない」と答えた60歳以上の高齢者の合計は、女性の19・8%に対し男性は25・3%に上る。
だが精神的負担や担い手不足など民生委員を取り巻く状況も厳しい。
「大変なのは個人情報の意識が根付きすぎていることだ」と指摘する。
家の中に入れてくれないことや、隣の家の情報を知らない人も多い。
だが「遠慮してはいけない。地域は踏み込まなければいけないときもある」と強調。
「みんなが地域のアンテナ。危機感を共有しなければ」と警鐘を鳴らす。
地域で高齢者を見守る取り組みでも、男性ならではの難しさに直面する場面がある。 |