<早大5-6中大>◇20日◇西東京市・早大グラウンド
早大に進学する早実・斎藤佑樹投手(18)が20日、大学初の対外試合の中大戦で先発デビューした。5回75球を投げ、散発4安打5奪三振で三塁も踏ませず無失点に抑えた。オープン戦用の背番号「16」で最速は144キロをマーク。早大野手が西武から金銭供与を受けた裏金問題余波で、報道陣完全シャットアウトの厳戒態勢の中で行われた試合で、上々のスタートだった。
斎藤が報道陣完全シャットアウトの異様な雰囲気の中、大学初の対外試合マウンドに上がった。デビュー戦となった中大戦。先頭打者はプロ注目の村田和哉外野手(3年)だった。カウント2-1から二ゴロに仕留め、1死二塁のピンチでは3、4番の中軸をフォーク、スライダーで連続三振に抑えた。
5回で75球を投げ、4安打で5奪三振。相手に三塁も踏ませず、上々のスタートだ。オープン戦3試合目で初めてベストメンバーを組んだ早大の“開幕投手”として、先発の役割を果たした。東都大学リーグ所属の相手中大は、昨春から2部落ちしたが、巨人阿部ら好選手を数多く輩出した名門だ。高校を卒業したばかりの斎藤にとっては格上の相手だった。
対戦した中大・清水達也監督(42)は「バッターが打ち気がない時はポンポンとストライクを取るし、バッティングカウントでは、ストライクからボールになる球を意識的に投げていた。すごく頭のいいピッチャー」とたたえた。ネット裏のスピードガンでは最速144キロをマーク。スコアをつけた中大部員は「フォークでストライクを取れるのがすごい」と舌を巻いた。
ただこの日の快投を生で見られたのは、ごく一部の関係者に限られた。早大野手が西武から金銭供与を受けた問題から派生し、17日開始のオープン戦から一切報道陣が球場に入ることが許されなくなった。一連の報道に、早大側が不信感を持っているのが一因だという。早大広報部は「学生野球の本分に立ち返って、練習に集中したいとの野球部の意向があった」とのコメントを発表した。
この日は斎藤を見ようと、緑色のシート越しに球場内が透けて見える隣接する橋に、報道陣や入場が許されなかった一般ファン延べ100人以上が集結。厳重な“カーテン”に覆われる中、斎藤は雑音をシャットアウトするかのように好投した。オープン戦用の初の背番号は、ロッテ小宮山らが背負った「16」をつけた。早大では右のエースナンバーとなる「11」は譲ったが、まだ仮番号の段階で、今後の活躍次第では今春のリーグ戦からエースナンバーを奪取する可能性もある。
沖縄・浦添キャンプ序盤は調整ペースの上がらない斎藤に対して、応武篤良監督(48)が奮起を促す発言を続けてきた。だが実戦に移ると、14日の紅白戦の3回無失点に続き、これで8イニング連続で無失点を続けている。大舞台での経験値はピカ一の斎藤が、あらためて本番での勝負強さを実証した。【前田祐輔】[日刊スポーツ 紙面から]