Bocklin ‘The Plague’


放射性物質の飛散という目に見えない恐怖。冷戦終結とともに忘れ去られ、今回の震災によって降って涌いたように現れて「国家存亡の危機」を演出するこの恐怖を前にすると、科学の時代21世紀を生きる我々といえど、その恐慌ぶりは疫病の流行を怯えた中世の人々のものと何ら変わらないような気がする。

中世まで遡らないとしても、19世紀を生きた世紀末の画家、ベックリンやロップスの描いた悪魔のイメージに、私は納得して共感を覚えてしまう。東北や北関東の廃墟の上空にも、実はこのようなおぞましい悪魔が跳梁跋扈していて、不可視の放射性物質をばらまき、不可視の大鎌をふるって無辜なる人々の命を狙っているのかもしれない。


Felicien Rops ‘Satan’