修学旅行に伊勢に行くことになったが、越境して通学している私は早朝の集合時間に間に合わないため、一同が伊勢に向かう私鉄電車の停まる途中駅から参加することになった。最寄駅からその途中駅まで一両編成のローカル線に乗っていくのだが、常用している花粉症の薬のせいか、私は不覚にも車中で眠ってしまった。目が醒めたときには目的の駅は遥かに通り越しており、電車は海辺を走っていた。私は聞いたことのない名前の駅で電車を降りた。その駅はなぜか半地中にあり、そのせいで湿度が高く、コンクリートの壁には苔のようなものが生えていた。

乗換予定時間はとうに過ぎ引き返すもままならず途方に暮れていた私を救ってくれたのは、駅で会った得体の知れない「エージェント」の人たちで、彼らに導かれるまま私は黒塗りの車に載せられて海岸に赴いた。そこには船着き場があり分不相応に大きな連絡船が泊められていた。私は不審にも思わず彼らと船に乗り込んだが、大きな客室にはほかに誰もおらず、そうこうしている間に汽笛とともに船は出港した。

陽が傾いた頃、倉庫ばかりの大きな港の埠頭に船は停められた。私はそこで「エージェント」たちに寄り添われて下船した。修学旅行の一日目の旅程はすでに終わっている頃で、きっと一同はホテルに着いて寛いでいるだろう。私が現れなかったことで教師は心配しているかもしれない。それ以上に家族は心配しているに違いない。ここはいったいどこだろう。辺りが暗くなるにつれて私は心細くなった。「エージェント」に案内された岸壁には小型の赤い潜水艦が停められていた。そうして「エージェント」たちは、ここまでに要した費用の書かれた請求書を手に手に私に示すのだった。