「昨夜は大使館で五時間くらいウダウダしておりました。人生において大使館でウダウダするのは貴重な体験です」(私の 1/31日の twitter から)

フランス大使館でのアート・イベント「No Man's Land」が行なわれた旧事務棟は、1957年、当時の新進建築家にして高級官僚であったジョセフ・ベルモンが設計して建てられたもので、廊下に沿って小さな個室が並び、どこか学校の研究室を思わせる造りでした。参加アーティストは、解体間近の建物の中から与えられた個室を丸ごと、壁、床、天井、部屋で使われてきた什器までを用いて表現を行なうため、このイベントは個展の寄せ集め、建物自体が個展ビルと化しているのでした。また個室だけでなく、建物の外壁、廊下、地下室、庭園などもまた表現の場となっているのです。建物には至る所に半世紀に亘り大使館として実用されてきた痕跡が遺されています。繰り返して展覧会が行なわれ、その度に過去の痕跡が消されていく美術館や画廊のような、だだっ広い、無味無臭で、ある意味特殊な専用場所での美術鑑賞に馴らされてしまった私たちには、この生々しい痕跡は鑑賞上の大いなるノイズとなるわけですが、私は馴染みのないこのノイズが心地よい刺戟にもなって、いつもとはひと味もふた味も違った愉しいユニークな体験ができました。Merci Beaucoup.