読了。なかなか見つからなかった朝日文庫版で全四巻、1000ページを超す分量、主な登場人物は50人を下らない長編小説の割りに、一切の破綻がなく、すべての伏線が喜劇的とも思われる一連の事件が起きる2000年8月28日に収斂していく。無理なく。

それより驚くべきは、作者が2000年の東北地方の街(と東京)を舞台にして描いて2003年時点に刊行された小説(法螺話)が、その後似たような事件となって現実に起こっていることだ。小説上では2000年7月23日に渋谷文化村通りで起こったことになっているトラック暴走事件は、2008年6月8日に加藤智大が引き起こした「秋葉原通り魔事件」としてさらに凶悪さを極めて現実化していて記憶に新しい。盗撮事件やロリコン警察官の淫行事件の実例については枚挙に暇がないが、夫婦が薬物を使用する下りは今夏「酒井法子事件」となって世間を騒がせている。ラストシーンで青年団の生き残りが整形手術を受け別人のようになって現れて驚かされたが、これは「英会話学校講師殺人事件」の市橋達也を想起させるではないか。まさに事実は小説より奇なり。そんな事実を予言した阿部和重は恐るべし。

これを書いた後、14日に起きた韓国・釜山の国際市場「実弾射撃場火災事故」の原因が「粉塵爆発」ではないかという報道を目にした。 「シンセミア」の中に、空気中に舞う小麦粉に引火して火災事故になるというショッキングな場面があったことを思い出した。先月のダイハツの工場の死亡事故も、アルミ粉の粉塵爆発らしい。