熱帯に来ているのだろう。ホテルのロビーには蘭やストレリチア(極楽鳥花)など熱帯の花々が飾られていて、私にはそんな気がした。ただ熱帯の割りには、ドレッシーな装いの人が多いように思える。日中の屋外は太陽が照りつける猛暑なので、隣合った建物どうしはチューブで連結されて、外に出ないでも移動できるようになっている。勿論チューブの中は冷房が行き届いていて涼しい。モノレールの駅までもチューブは繋がっている。銀色のモノレールは、海を隔てた島にあるテーマパークと繋がっているらしい。後ろに座った黒人男性が、そのテーマパークから戻ってきたらしく、同僚にいろいろと説明をしている。明日から学会があり、今日は予定がない彼は独りで遊びに行ってきたのだろう。私にはこの場所がシンガポールのどこかのように思えていたが、彼の話の中に、訪れたテーマパークはまるでセントーサ島のような雰囲気だった。と言及があり、恐らくここはシンガポールとは別の場所なのだろう。夢に出てきたことのあるような場所。どこまでも青い海、そこに浮かぶ緑の島を俯瞰する情景。すべては作り物なのかもしれない。

今夜は学会主催者によるガラ・ディナーが行われる。よりによって野外で開催されるそうだ。交通を遮断して、通りにテーブルを並べるらしい。熱帯特有のスコールの恐れだってあるというのに。それより驚いたことに、ディナーで使う皿が足りないらしい。参加者は各自、宿泊ホテルの部屋からこっそり皿を持ち出さなければならない。なんとも冴えない。