「ここには前に来たことがある」初めて訪れた筈なのに、見覚えのある街。デジャブ。かつて訪れたことのある別の街の、単なる空似ということだってあるだろうが、ひょっとすると夢に現れた街だったのかもしれない。ただ、夢に現れた街だって、実在する別の街の、単なる焼直しなのかもしれない。そこを訪れたのか、写真や映像を見たのか、はたまた読書体験から頭の中でイメージしたものなのか、いずれにしても人の見る夢など所詮は経験の産物にすぎないのだから。
「どうしてここを知っているのだろう」この不思議な感覚には何らかの私的な体験が作用しているはずなのに、それが何なのか思い出せない。もどかしい感覚に襲われることも多い。しかし今回は違った。どこか清々しい気分を覚えた。明らかにここは何度か夢に見た場所なのだ。馴染みの場所が実在していたことに対する驚きと悦びが綯い交ぜになったような気分なのだ。
尾根に沿って延びる街道の両側には古くからの街並みが続いている。気紛れに通りを外れて裏側に廻ってみると、そこは崖になっていた。かつて街自体が外敵に対して城塞の役割を果たしていたのかもしれない。崖の下が海ならば、地中海に面したいくつかの城塞都市を思い出すが、崖はそれほど切り立ったものではない。せいぜい、ビル四、五階分の高さというところか。よってグランドキャニオンやスペインのロンダなどの内陸の地形とも別物なのだろう。それらの崖は目も眩むほどに落差が大きかった。
ビル四、五階分の高さの崖から橋のようなものが突き出ている。但し向こう側には橋桁を渡す袂となる土地などない。橋は飛び込み台から突き出した板のような感じで、見晴らし台のようにも見える。しかし橋の向こうからこちらに向かって往来があり、橋桁の先端から崖下に降りる階段が続いていることがわかる。高所恐怖症気味で少し足が竦んだが、進んでみると階段はいったん三角形の踊り場に降り、そこから直角に左に曲がる高架の通路へと続いていた。踊り場と高架通路の部分は、二階建てのショッピングセンターの、駐車場を兼ねた屋上の上に繋がっていて、崖上と崖下を繋ぐショートカットになっていたのだった。


ショッピングセンターの裏手に回ると、橋桁部分が頭上高くに見えた。

「どうしてここを知っているのだろう」この不思議な感覚には何らかの私的な体験が作用しているはずなのに、それが何なのか思い出せない。もどかしい感覚に襲われることも多い。しかし今回は違った。どこか清々しい気分を覚えた。明らかにここは何度か夢に見た場所なのだ。馴染みの場所が実在していたことに対する驚きと悦びが綯い交ぜになったような気分なのだ。
尾根に沿って延びる街道の両側には古くからの街並みが続いている。気紛れに通りを外れて裏側に廻ってみると、そこは崖になっていた。かつて街自体が外敵に対して城塞の役割を果たしていたのかもしれない。崖の下が海ならば、地中海に面したいくつかの城塞都市を思い出すが、崖はそれほど切り立ったものではない。せいぜい、ビル四、五階分の高さというところか。よってグランドキャニオンやスペインのロンダなどの内陸の地形とも別物なのだろう。それらの崖は目も眩むほどに落差が大きかった。
ビル四、五階分の高さの崖から橋のようなものが突き出ている。但し向こう側には橋桁を渡す袂となる土地などない。橋は飛び込み台から突き出した板のような感じで、見晴らし台のようにも見える。しかし橋の向こうからこちらに向かって往来があり、橋桁の先端から崖下に降りる階段が続いていることがわかる。高所恐怖症気味で少し足が竦んだが、進んでみると階段はいったん三角形の踊り場に降り、そこから直角に左に曲がる高架の通路へと続いていた。踊り場と高架通路の部分は、二階建てのショッピングセンターの、駐車場を兼ねた屋上の上に繋がっていて、崖上と崖下を繋ぐショートカットになっていたのだった。


ショッピングセンターの裏手に回ると、橋桁部分が頭上高くに見えた。
