最近はあまり利用しなくなったが、国会議事堂前駅は、今も私にとっては素敵な駅だ。

モルタル塗から既に白い石貼りに改装されて味気なくなった丸の内線の方ではなく、そのずっと地底を走る千代田線のホームの方だ。地下6階分、深さにして38m弱と、東京メトロ全線中最深部にあるらしいこのホームに立つと、空間が彎曲した内壁ごと線路に沿って大きく蛇行していて、まるで都市の内臓の中にいるような気分になる。その内臓は、歳月とともに少しずつ傷み出して、今で





はいたるところで漏水が生じている。壁の裏には、恐らく膨大なケーブルがパイプに封じられて、またはゴムの被覆に覆われて潜んでいるのだろうが、都市の腹に溜まった腹水は行き場を失って、それらケーブルを侵しながら伝って壁の外側に滴り落ちているようだ。それは、触ることが憚られるほどに穢い汚水に違いないが、根本的な治療法を知らない駅員たちは、ビニールとガムテープを





用いた、驚くほどプリミティブな処方で対処している。そのような「手の仕事」は、どこか現代美術の作品のような趣きで私の目を惹く。有機体を感じさせる作品。この空間自体が実は絶滅に瀕した巨大な有機体、例えば恐竜ブロントサウルスのような生き物の内側で、その身体のいたるところから穢い体液を垂れ流しながらも生き物は生き永らえているような気がする。ここで一生を終える駅員たちは実は看護人でもあり、有機体の集中治療のため、体内奥深くに赴くのである。四六時中傷口から流れる液体の経路をビニールで覆い隠し、乗客に見つからないよう汚物をドレインに導いているのだ。






長いホームを歩きながらいろいろと考えた。巨大な生き物の吐き出した体液はいったいどこに行き着くのだろう。ドレインに呑み込まれ、重力に従って低い方、低い方へと滴り落ち、それは地球の中心に向かって流れて行くに違いない。そこには、暗黒の、不潔極まりない汚穢の世界が待っているような気がする。