木造の四階建ての建物の玄関で、買っ たばかりの黒い革の靴を脱いで板張りの床に上がる。薄い靴下越しに冷たい感触を味わいつつ、奥の階段まで進む。建物は間口が狭いわりに奥行きがあり、一階にはさしたるものは置かれていない。軋むような音の鳴る階段を四階まで上がると旧態依然とした受付があり、ここで初めて用を取り次いでくれる。四階は薄暗く紫煙が渦巻くオフィスで、薄緑色のお揃いの制服を着て一様に無表情なスタッフが働いている。彼らの給与水準が驚くほど低いことは知らされている。
長い間待たされたわりに、相手が用を済ますにはものの十分ほどしかかからなかった。「こんな仕事なんて...」応対した男の口元に浮かんだ意地悪そうな笑いが意味ありげだった。外は既に暮れかけており、こんな場所には長居せず急いで帰りたかった。
一階に下りてみると脱いだ靴がなくなっていた。誰かが間違えて履いて帰ったのかもしれない。しかし残された靴に似たものはなかった。暫くすると、それらの靴も持ち主たちが履いて帰り、後には男物の雪駄のようなもののほか残らなかった。
仕方がないので、雪駄を履いて外へ出てみたら、先程は存在しなかった露店が通りぞいに連なって店を出している。店の多くは中古品や骨董というかガラクタを扱っており、一帯は泥棒市の様相である。その中には靴を扱う店もあり、ビニールの袋に入れられた革靴が山のように積まれている。今更そんなことをしても仕方がないと思いつつも自分の靴がないか探してみる。目付きの悪い店番の女が口元に笑みを浮かべてこちらを窺っている。
長い間待たされたわりに、相手が用を済ますにはものの十分ほどしかかからなかった。「こんな仕事なんて...」応対した男の口元に浮かんだ意地悪そうな笑いが意味ありげだった。外は既に暮れかけており、こんな場所には長居せず急いで帰りたかった。
一階に下りてみると脱いだ靴がなくなっていた。誰かが間違えて履いて帰ったのかもしれない。しかし残された靴に似たものはなかった。暫くすると、それらの靴も持ち主たちが履いて帰り、後には男物の雪駄のようなもののほか残らなかった。
仕方がないので、雪駄を履いて外へ出てみたら、先程は存在しなかった露店が通りぞいに連なって店を出している。店の多くは中古品や骨董というかガラクタを扱っており、一帯は泥棒市の様相である。その中には靴を扱う店もあり、ビニールの袋に入れられた革靴が山のように積まれている。今更そんなことをしても仕方がないと思いつつも自分の靴がないか探してみる。目付きの悪い店番の女が口元に笑みを浮かべてこちらを窺っている。