日没までにまだ少し時間がある。
大通りからはずれた場所に建つカジノの屋上に上がって、ローマ神殿やピラミッドなど、異形の外観を備えたカジノ群を遠くに眺めていた。屋上には建物の縁より随分と手前に透明の柵がつくられていて、おそらくはカジノで破産した自殺志願者が飛び降りるのを防ぐためのものに違いない。結果的に、建物の足元を見渡すことができなくなっている。いや、覗き込むことを禁じているような気さえする。気になったので、階下に降りて周辺を散策することにした。
カジノは通りに沿って建ち、通り以外の方向には高い塀があって、視界が閉ざされていた。仕方がないので塀沿いに、交通量の激しい通りの脇を歩いた。やがてカジノの敷地が途絶える場所まで辿り着く。そこにはお決まりのカジノの看板が立っている。塀の裏側に回ると眼前には草の茂る小高い丘が広がり、丘の向こうを見渡すことはできなかった。
こうなると何としても丘の向こうの景色を見てみたくなった。左に曲がると、ホテルの塀沿いに小川が流れていた。右側を見ると、小川は通りの下の暗い暗渠に流れ込んでいた。小川に沿っては畦道が延びていて、そこは丘に対してちょうど谷になっている。
微動だにしないので最初は気付かなかったが、小川に架かる橋の袂に、巨大な、普通の二倍はある黒い牛が休んでいた。よく見ると、背中の各所に傷があり、血を流していて痛々しい。牛に悟られないよう、忍び足で小川に架かる橋を渡り、丘に上がる急な階段を進んだ。前方には観光客と思しき軽装の老夫婦が手を携えゆっくりと歩を進めていて、先を急ぐわけではないが、いらいらするので傍らを抜き去った。背後で気配に感づいたのか、牛が鳴いている。
丘のうえは、黒い石板の敷き詰められた人工の広場になっていた。そこかしこに観光客がたむろしている。別の登り口があるのかもしれない。広場の中央には黒い壁のようなものが視界を遮っており、その隣には赤い砂岩で作られた円柱が何本か並んでいる。それらの影が広場に長く延びている。
壁の向こうには劇的ともいえる景色が待っていた。夕日の斜光に照らされた広場は前方で突然崖になっていて、崖の下には青銅色の屋根を持つ中世都市が広がっていた。ドームや塔も見える。その向こうに夕陽が今将に沈もうとしており、オレンジ色に染まった景色はこの世のものではないくらいに神々しく美しい。
素晴らしい景色に酔っていて、ふと気づくと、広場にはそれと見て観光客と判る人たちが減っている。辺りが暗くなるにつれ、観光客と入れ替わるように風体の怪しい人たちがどこからか湧いてくるように増えていた。どこから沸いてきたのかはすぐ分かった。先ほどの黒壁の裏側に、緑色と黒の市松模様のタイルを壁材にした、傾きかけた廃墟のような建物が建っていて、その周りだけに人が多い。
身の危険を感じたときは既に遅かった。目つきが険しく口元にうすら笑いを浮かべた男が近づいてきて、肩にかけていたバッグを奪おうとした。バッグを守ろうと前傾姿勢をとったとき、背後から腰を抱えられた。手足をばたばたさせて、大きな声を上げて助けを求めたところで、目が醒めた。
ひどく寝汗をかいていた。

自己分析すると、最初のほうがラスベガス、広場はインドのファティプール・シクリ、広場から見た風景は「スターウォーズ」↑じゃないか。と思う。
大通りからはずれた場所に建つカジノの屋上に上がって、ローマ神殿やピラミッドなど、異形の外観を備えたカジノ群を遠くに眺めていた。屋上には建物の縁より随分と手前に透明の柵がつくられていて、おそらくはカジノで破産した自殺志願者が飛び降りるのを防ぐためのものに違いない。結果的に、建物の足元を見渡すことができなくなっている。いや、覗き込むことを禁じているような気さえする。気になったので、階下に降りて周辺を散策することにした。
カジノは通りに沿って建ち、通り以外の方向には高い塀があって、視界が閉ざされていた。仕方がないので塀沿いに、交通量の激しい通りの脇を歩いた。やがてカジノの敷地が途絶える場所まで辿り着く。そこにはお決まりのカジノの看板が立っている。塀の裏側に回ると眼前には草の茂る小高い丘が広がり、丘の向こうを見渡すことはできなかった。
こうなると何としても丘の向こうの景色を見てみたくなった。左に曲がると、ホテルの塀沿いに小川が流れていた。右側を見ると、小川は通りの下の暗い暗渠に流れ込んでいた。小川に沿っては畦道が延びていて、そこは丘に対してちょうど谷になっている。
微動だにしないので最初は気付かなかったが、小川に架かる橋の袂に、巨大な、普通の二倍はある黒い牛が休んでいた。よく見ると、背中の各所に傷があり、血を流していて痛々しい。牛に悟られないよう、忍び足で小川に架かる橋を渡り、丘に上がる急な階段を進んだ。前方には観光客と思しき軽装の老夫婦が手を携えゆっくりと歩を進めていて、先を急ぐわけではないが、いらいらするので傍らを抜き去った。背後で気配に感づいたのか、牛が鳴いている。
丘のうえは、黒い石板の敷き詰められた人工の広場になっていた。そこかしこに観光客がたむろしている。別の登り口があるのかもしれない。広場の中央には黒い壁のようなものが視界を遮っており、その隣には赤い砂岩で作られた円柱が何本か並んでいる。それらの影が広場に長く延びている。
壁の向こうには劇的ともいえる景色が待っていた。夕日の斜光に照らされた広場は前方で突然崖になっていて、崖の下には青銅色の屋根を持つ中世都市が広がっていた。ドームや塔も見える。その向こうに夕陽が今将に沈もうとしており、オレンジ色に染まった景色はこの世のものではないくらいに神々しく美しい。
素晴らしい景色に酔っていて、ふと気づくと、広場にはそれと見て観光客と判る人たちが減っている。辺りが暗くなるにつれ、観光客と入れ替わるように風体の怪しい人たちがどこからか湧いてくるように増えていた。どこから沸いてきたのかはすぐ分かった。先ほどの黒壁の裏側に、緑色と黒の市松模様のタイルを壁材にした、傾きかけた廃墟のような建物が建っていて、その周りだけに人が多い。
身の危険を感じたときは既に遅かった。目つきが険しく口元にうすら笑いを浮かべた男が近づいてきて、肩にかけていたバッグを奪おうとした。バッグを守ろうと前傾姿勢をとったとき、背後から腰を抱えられた。手足をばたばたさせて、大きな声を上げて助けを求めたところで、目が醒めた。
ひどく寝汗をかいていた。

自己分析すると、最初のほうがラスベガス、広場はインドのファティプール・シクリ、広場から見た風景は「スターウォーズ」↑じゃないか。と思う。