横浜中華街には台湾料理のお店は数えるほどしかありません。戦前、中華民国から日本に渡った中国人によって中国大陸各地の中華料理を供するお店を開いたのが中華街の始まりで、国民党政府が台湾に拠点を移した後、台湾からやってきた人たちは少ないのでしょう。つまり、現在の台湾から見ると、殆どのお店が「外省人」にあたる人たちが経営するもので、「本省人」の経営する庶民的な台湾料理のお店はあまりないということです。

春節に関帝廟通りを歩いていたら、山下町公園の近くに「台湾家庭料理」「秀味園」とドアに書かれた小さなお店を見つけました。メニューには、このブログでもおなじみの「魯肉飯」があるようです。嬉しくなってガラスのドア越しに店内を覗いてみたんですが、テーブルはたったの二つだけ、既に先客が座っていたので入るのを諦めました。帰宅後も気になったので、中華街で配られるマップでお店のことを調べてみたのですが、何故か店の名前は載っていません。横浜中華街のオフィシャル・サイトで検索しても、台湾料理を供するお店は「青葉」と「興昌」くらいしか出てこないのです。

一ヵ月後、横浜中華街を再訪した際に「秀味園」を覗いてみたところ、幸運?なことにお客は見当たらず、意を決して入ってみることにしました。すると日本語のたどたどしいおばさんが迎え入れてくれ、なぜか「奥へどうぞ」と薦めるのです。

「奥?」店の奥は日本家屋。居住空間と思われる推定六畳の板の間があり、テーブルと椅子が置いてあるのが見えます。上がり框を上がったところで靴を脱ぎ正面の靴箱に入れます。通されたのは、六畳間に続いてさらに奥にある推定八畳、床の間つきの畳の間でした。そこには座卓が三卓あり、大きな円卓では先客が食事をしていました。それ以外に家具はないのですが、押入れはあるし、見せたくない場所はカーテンで隠してあります。おばさんたちは店が終われば、押入れから布団を出して、ここに敷いてお休みになるんじゃないの。と想像してしまいました。


店の最深部から入口の方を撮ってみました

オーダーした料理は「水餃子」「焼きビーフン」「切り干し大根入りのオムレツ」、そして「魯肉飯」。どれも飛び切り美味しいわけではないんですけど、一品千円しないリーズナブルなお値段で台湾の家庭料理が楽しめます。個人的には酢醤油で食べたオムレツが美味しかったです。


魯肉飯と水餃子。魯肉飯には、肉味噌だけでなく豚の三枚肉の煮たもの、高菜、煮卵が入っていました

なんだかよそのおうちで手料理をご馳走してもらっているような錯覚に陥る不思議な寛ぎ空間、アットホーム空間でした。とても中華街にいるとは思えませんでした。