安平の裏道、廃屋の門に剣を咬んだ獅子の顔が掘り込まれているのを見つけました。この図像は「剣獅」もしくは「獅咬剣」と呼ばれる「辟邪物」、一種の魔よけです。邪悪な悪霊は直進する性質があり、門など家の入口にこの獅子の図像を置くことで、邪霊を威嚇して侵入を避けることができると信じられています。



「剣獅」は東南アジアを中心として広く華人のコミュニティーにおいて目にすることができます。大村次郷・著「新アジア漫遊」というカラー写真満載の文庫本に、インドネシア、マレーシア、ラオスで写された「剣獅」の写真が載せられています。中には「剣獅」「八卦牌」「石敢当」「鏡」などを複合させた強力な魔よけもありました。

安平は十数年前まで、いわば「剣獅」のメッカで、街のどの家の門にも「剣獅」を見ることができたそうです。家々に架けられた「剣獅」には一つとして同じものはなく、表札代わりに用いられていたそうです。言い伝えによると、安平を拠点とした鄭成功の軍隊で表面に獅子の描かれた盾が用いられ、剣を横挿しにして盾をしまった様子が獅子が剣を咬んでいるように見えたため、人々がこれを真似て図案化したということです。安平のお土産の一つとして、生地に「剣獅」の図案が焼かれた「剣獅餅」なる月餅も有名だそうです。