
昨年から今年にかけて、ダン・ブラウン著「ダ・ヴィンチ・コード」がベストセラーになっていますが、Tomotubby も熱中して読み、同じテーマの本や研究本の類いまでを揃えてしまいました。
本編を最後まで読み通すより先に、周辺の本をあれこれ読んだりしたせいか、ダン・ブラウンという作家に対する印象が、周りの人たちと少し違ってきています。「ダ・ヴィンチ・コード」という小説は、確かに息をもつかせぬスリリングな展開が映画でも観ているように素晴らしいのですが、この小説をモノにしたダン・ブラウンというストーリーテラーの類い稀な才能は、刊行されるもあまり売れなかった各種「謎」本のエッセンスを引用し、うまく繋ぎ合わせて小説に仕立て上げることにあったのではないかと思えてきました。

レンヌ・ル・シャトー
まあ、それはいいとして、関連本の中でも興味深かったのが、荒俣宏 監・訳のヘンリー・リンカーン著「隠された聖地~レンヌ・ル・シャトー マグダラのマリアの聖地を巡る謎を解く」という本です。「ダヴィンチ・コード」の中では詳しく語られていませんが、マグダラのマリアゆかりの南仏レンヌ・ル・シャトーに隠されたテンプル騎士団の財宝の「謎」について書かれています。羊皮紙に書かれた複雑な暗号を解読したソーニエールという名の(そういえば「ダ・ヴィンチ・コード」の登場人物と同名の)実在した神父が、財宝を手に入れたのではないか、彼はその財宝をもとにマグダラのマリア教会を建て直したのではないか...と、冒頭からぐいぐい引き込まれること間違いなしなのですが、途中で暗号が難しすぎてしんどくなる読者が大半でしょう。本屋の本棚に並んでいるのを見たことがないのはそのせいかな...
荒俣宏は「隠された聖地」を種本にして「レックス・ムンディ」という小説も書いています。発刊当時、横尾忠則のコンピュータ・アートの表紙が目を惹きましたが、小説の方はあんまり評判にはならなかったように思えます。最近は「ダ・ヴィンチ・コード」にあやかって、文庫本がよく売れているみたいですが。
この「レックス・ムンディ」の主人公は世界のレイラインを追う、通称レイハンターです。太陽や星の運行を調べた天文学とも関係あるようですが、古代の聖地や遺跡が一本の直線上にいくつも並んでいる例が世界中にあり、このような直線を「レイライン」と呼んでいます。「レイ」とは光をあらわす言葉で、イギリスのアマチュア考古学者がケルト人の築いたとされる遺跡の位置を結んで最初にみつけた「ライン」の上に、何故か「レイ」という言葉を含んだ地名が多く見つかったことから名づけられたそうです。
「レイライン」の中で最も有名なものに「マイケル・ライン」があります。このラインはイギリス最西部から北東方向へ向けて、ケルト人の遺跡間を結んだ線なのですが、この上には、キリスト教の建造物が多く見つかります。それも聖マイケルを祀るものが多かったため「マイケル・ライン」と呼ばれるようになりました。このラインの西南部にある海岸には「セント・マイケルズ・マウント」なる聖地の島があり、そこにはマイケルを祀る修道院が建てられています。
この「セント・マイケル」をフランス語読みすると「サン・ミッシェル」。そう「セント・マイケルズ・マウント」とは、まさしくイギリスにある「モン・サン・ミッシェル」なのです。ドーバー海峡を隔てて同じ名を持つ二つの小島は、元はともにケルト人の聖地だったといわれています。そしてキリスト教徒の手でどちらにも聖ミカエルを祀った修道院が建てられたのでした。

セント・マイケルズ・マウント(これ以上の倍率の写真がありません、一部加工)