細く曲がりくねった坂道に怪しげな看板を掲げた商店が並んでいる、つげ義春の漫画「ねじ式」に出てきそうな町。子供のときから繰り返して見る夢の風景ですが、高校時代に、夢の話を友人に聞かせたところ、「それはイシキリサンと違うか」と言われました。イシキリサンとは、意識離散ではなく「石切さん」、大阪の東、生駒山の麓に位置する町、石切にある石切劔箭神社のことです。その神社の近くに、世にも奇妙な商店街があるのだそうです。そう言われると、子供のときに大人に連れられて坂道の上の神社に参ったような気がしました。それ以来、石切さんのことは気になっていたのですが、今回近くに行く機会があり、訪れてみました。

大阪市街が望める高台にある近鉄奈良線石切駅に降り立ち、案内地図を見つけて、まず自分の思い違いに気づきました。夢ではいつも坂道を上るので、神社は生駒山の中腹にあり、参道は石切駅から生駒山に向かって上っていく坂道だと信じ込んでいましたが、現実はそうではなく、神社は駅よりずっと低い位置にあり、そこまでの参道は下り坂なのでした。ラッキーなことに、神社の近くに北石切駅という新しい駅ができており、折り返して石切駅まで戻るために坂を上る必要はないのでした。



参道は夢で見たように曲がりくねった細い道で、その両側には怪しげな看板(失礼)を出す店が軒を連ねています。道行く人は少なく、訪れた時間が夕方だったせいか、その日が休業日だったのか、殆どの店は開いておらず、うら寂しい雰囲気です。この雰囲気は何度も見た夢の風景と似ています。特筆すべきは、商品を売らない「占い」の店が多いことです。こんなにたくさんあって、果たして客が来るのだろうか、客の取り合いにならないものか、経営が成り立つのだろうか、と思えるほど多いのです。恐らくここ石切は日本で一番「占い師」が集まる「占い師密度」トップランキングの町ではないでしょうか。その中に、よくある「屋台村」や、広島にある「お好み村」にも似た「占い村」のような珍しい店を見つけたので写真を撮っていると、元締めのような人が出てきて「やめてんか」と言われました。しかし、そんな圧力には負けずにしっかり写真を撮りました。



それから漢方薬の店も沢山ありました。「漢方薬店密度」の方もかなり高い方ではないかと思われます。





石切参道商店街を抜けると石切劔箭神社の前に着きました。境内では、のび太がするように、行ったり来たりしている人がいるので、何を悩んでいるのだろうか。と思いました。自然が私を呼んでいるのでお手洗いを借り、戻ってきても、行ったり来たりしているので、ははん。これは、かの有名な「御百度参り」というものだ。と納得しました。良く見ると御百度を踏んでいる人は、女性一人、男性二人、計三人もいました。シンガポールのヒンドゥー教寺院において、リンガの周りで御百度(のようなもの)を踏んでいるサリー姿の女性がいましたが、この人たちもリンガのような二つの石の間を耽々と回っていて、その姿がどこか似ています。因みに回る方向は皆、時計回りのようでした。チベットのラサでは反時計回りではなかったかな。と少し疑問を抱きましたが。ということで、石切劔箭神社の「御百度実施頻度」の方も全国平均に比べると高いランクでないかと思われました。