海岸、切り立った崖の上に建つ大規模なリゾートホテル。チェックインを済まして部屋に向かう。部屋は四階。ロビーの突き当たり左に巨大な吹き抜けがあり、上階に続く階段がある。いや階段ではない。斜面である。上ろうとしたが、靴が滑って上れない。どうやら滑り台になっているようだ。傍らに階段があるのを見つけたが、三階までしか上がれない。三階の客室は海に面して並んでいる。廊下を奥の方まで進むと90度左に折れ、今度は薄暗くやや傾斜のついた短い廊下が続く。再び突き当たると90度左に折れ、今度は高い窓から陽光の射す明るい廊下が続いていた。
しかし廊下を進んでも部屋が見つからないどころか、廊下はただの廊下で、突き当たりは行き止まりだった。しかし途中で宿泊客と思われる数人とすれ違っている。どこかに客室に通じる入口があるに違いない。注意して見てみると、窓のない方の壁に黒い金具があるのを発見。引き戸でもなく、押してもびくともしないが、前方に引っ張ると難なく開いた。壁の向こうには陽の当たらない薄暗い廊下があった。右は壁、左へ進むと廊下はまた90度左に折れ曲がり、客室が廊下の左側に沿って並んでいた。そのうちのひとつが自分の部屋であることはすぐに判った。部屋の前の廊下には窓はないが、突き当たりの壁面は全面ガラス張りの明かりとりで、この階だけが海に向かって、いや、空に向かって突き出しているかのような錯覚に襲われた。廊下は仄かに海の匂いがする。
ホテルの部屋は思ったより広かった。壁は白一色で統一されていて、大きな窓の脇には、縦より横の方の長い、車で言えばリムジンのような白いベッドが、何故か頭の側を窓側に向けて置かれていた。部屋自体は殺風景なつくりなのだが、窓枠に切り取られた青い空と、ベッドにふりそそぐ陽光のせいか、ちっともそれを感じなかった。ベッドに上がり窓の外を見下ろすと、ホテルが崖っ淵に建っていることがよく判った。群青色の穏やかな海が遥か足元にあり、水平線の向こうに、とても自然の造形とは思えない火山島のシルエットが見える。ただ自然だけが見えるのではない。左下後方から海に向かって滑り台が延びている。滑り台の途中には、四本の鉄骨に支えられた踊り場が見える。
ホテルの部屋はやはり、ひとりで過ごすには広すぎた。同行者は急用ができ、帰ってしまったのだから仕方がない。退屈なので、Tシャツを洗濯することにした。Tシャツは何故か白いものと青いものばかり。大理石の床に広げて乾かしてみた。
洗濯を終えてベッドで寛いでいたら、眠ってしまった。目覚めると窓の外は曇天。時間が経ってしまった。Tシャツはそのままにして、食事をとるため外出することにした。部屋までの複雑な経路を引き返しつつ気づいた。このホテルの建物は海側には窓があるが、反対側、街の側にはいっさい窓がない、窓があっても外の眺めが見えないほど高い位置にしかないことに。
しかし廊下を進んでも部屋が見つからないどころか、廊下はただの廊下で、突き当たりは行き止まりだった。しかし途中で宿泊客と思われる数人とすれ違っている。どこかに客室に通じる入口があるに違いない。注意して見てみると、窓のない方の壁に黒い金具があるのを発見。引き戸でもなく、押してもびくともしないが、前方に引っ張ると難なく開いた。壁の向こうには陽の当たらない薄暗い廊下があった。右は壁、左へ進むと廊下はまた90度左に折れ曲がり、客室が廊下の左側に沿って並んでいた。そのうちのひとつが自分の部屋であることはすぐに判った。部屋の前の廊下には窓はないが、突き当たりの壁面は全面ガラス張りの明かりとりで、この階だけが海に向かって、いや、空に向かって突き出しているかのような錯覚に襲われた。廊下は仄かに海の匂いがする。
ホテルの部屋は思ったより広かった。壁は白一色で統一されていて、大きな窓の脇には、縦より横の方の長い、車で言えばリムジンのような白いベッドが、何故か頭の側を窓側に向けて置かれていた。部屋自体は殺風景なつくりなのだが、窓枠に切り取られた青い空と、ベッドにふりそそぐ陽光のせいか、ちっともそれを感じなかった。ベッドに上がり窓の外を見下ろすと、ホテルが崖っ淵に建っていることがよく判った。群青色の穏やかな海が遥か足元にあり、水平線の向こうに、とても自然の造形とは思えない火山島のシルエットが見える。ただ自然だけが見えるのではない。左下後方から海に向かって滑り台が延びている。滑り台の途中には、四本の鉄骨に支えられた踊り場が見える。
ホテルの部屋はやはり、ひとりで過ごすには広すぎた。同行者は急用ができ、帰ってしまったのだから仕方がない。退屈なので、Tシャツを洗濯することにした。Tシャツは何故か白いものと青いものばかり。大理石の床に広げて乾かしてみた。
洗濯を終えてベッドで寛いでいたら、眠ってしまった。目覚めると窓の外は曇天。時間が経ってしまった。Tシャツはそのままにして、食事をとるため外出することにした。部屋までの複雑な経路を引き返しつつ気づいた。このホテルの建物は海側には窓があるが、反対側、街の側にはいっさい窓がない、窓があっても外の眺めが見えないほど高い位置にしかないことに。