Hotel Ibis に着いたとき、既に午前1時を回っていた。カードキーで開けた部屋は、こじんまりしたというか、ツインというには狭く、二つ星ホテルながら新しくて清潔で、シャワーしかなかった。Ibis は Accor Hotels グループの中で最もリーズナブルなホテルチェーンであり、シェラトンやヒルトンやノボテルなど錚々たるホテルが揃うこの空港エリアにおいて、最安レートのホテルであることは間違いなかった。御局の一人は、どうせなら、もっと上等なホテルにして貰えばよかったのに。とあからさまに不満を洩らした。Tomotubby は、空港で夜を過ごすより、部屋があっただけ幸せでしょ。と言いたくなったが、やめた。

翌日はパリを観光するにも時間がないので、たっぷり朝寝坊をして、指定された時間にエールフランスのカウンターに向かった。昨日と違って日本人のスタッフが待ち構えていた。私たちについて全てを理解しているのか、半日遅れの搭乗手続きは難なく終わった。余談であるが、Tomotubby の荷物は既に規定重量オーバーだったが、飛行機が遅れたせいで機内持込予定の手荷物を詰め込んで重くなったんだから、エールフランスは迷惑かけたんだから、堅いことは言わない言わない。と論旨をすり替えたら、今回だけは大目に見ましょう。ということになった。荷物の重量超過には殊更厳しく、超えているとしっかり課金するので有名な、あのエールフランスが、である。

よく見るとここには日本人客がやけに多い。団体さんだろうか。日本人客の輪の中で、エールフランスのスタッフと思しき日本人の中年女性が、なにやらしきりに謝っていた。暇なのでその輪に加わってみた。どうやら空港で盗難事件があったようで、被害に遭った男性が盗まれた手荷物をくどくどと説明している。イタリアで買った高価なお土産をみんな盗まれたそうだ。手荷物を脇において、空港の椅子で眠っている間に盗まれたらしい。そりゃ、あんたが悪いね。こんなところで眠るのが悪い。

女性スタッフは、盗難に遭った男性の帰国便の席をビジネスクラスにアップグレードさせて頂きます。などと言っている。Tomotubby も足止め食って一日を無駄にしたんだから、ビジネスクラスにして欲しいよ。と思った。男性は、エールフランスがホテルを用意してくれていたら、こんなことにはならなかったんだ。と未練がましくぼやいている。女性職員は平謝りである。アリタリア機の遅れについては情報が無く、なにぶんお着きになったのが深夜のことでしたので、職員が既に帰宅してしまっていました。こんなに沢山の日本のお客様が、空港で一夜を過ごされたとは、たいへん失礼を致しました。

え。あれ。それって、あのアリタリア便! どうやら責任の一端は、というか大半は Tomotubby にあるような気配なのである。事が露見すると袋叩きの刑だ。Tomotubby はこそこそとその場を立ち去ることにした。御局たちがホテルに宿泊したことを吹聴していなければよいが...