バリ旅行を目前に控えた Tomotubby は、バリの芸術、芸能に多大な影響を与え、後年バリの代表的な観光資源となったケチャを創始したドイツ人画家ヴァルター・シュピースについて興味を持ちました。彼自身もバリから多くを吸収し、バリをモチーフにした絵を数多く描いています。しかし大部分の作品は、アムステルダムの熱帯博物館に収蔵されており、現在バリに残された彼の絵は、ウブドのアグン・ライ美術館にある「チャロナラン」という題の一枚だけです。実は唐突にゴーギャンを話題にしたのも、シュピースの果たした役割と、どこか類似性を感じたためでした。

ただシュピースがゴーギャンと違うのは、ゴーギャンがタヒチ人から嫌われ、人里離れた場所にアトリエを設けたのに対して、シュピースは、ウブドのスカワティ王家に招かれ、王宮近辺にアトリエを構えていたことです(ウブド郊外の HOTEL TJAMPUHAN の中に彼の暮らした部屋「シュピース・ルーム」があり宿泊できます)。バリの人々にケチャや新しい絵画手法を教えたシュピースは、最良の隣人として扱われていたのです。後年、彼が同性愛者ゆえに、オランダが派遣したインドネシア総督により風紀紊乱のかどで逮捕され監獄に入れられた際も、逮捕日の夕刻には、ウブドのガムラン楽団が監獄の前で悲しみを表す曲を奏で、彼を釈放すべく陳情したといいます。