アンティーク(古玩)は買い急いではいけない。家具にしろ陶磁器にしろ、いわば、作られ使われ続けた百年を超える時間を買うのだから。Pet はこの日に備えて、学芸大学や神宮前のアジアン家具店で事前に調査をしたうえに、香港に着いてからも骨董店を巡って目を肥やしたのであった。ついでに中華料理で腹を肥やしたのもいうまでもないが。

気をつけないといけないのは、骨董店に置いてあるものは玉石混淆であることだ。場合によれば「石」しかない場合もある。ひどい場合には、「玉」と思って買ったものが「石」を通り越して「プラスチック」だったというような笑えない話もある。中華料理店などでよく目にする玉で作った果実の鉢植え細工は、殆どがプラスチックで作られている。中国旅行で土産に買って、ずっと玉だと信じている人がかなりの数いるのだが、もしそれが本物なら、そんなに安く買えないよ、故宮博物館にあるよ、と忠告してあげたくなる Pet である。

骨董店の店主は店を訪れた客の一挙手一投足をよく見張っている。客の視線は玉に向けられているのか、それとも穴埋めの多くの石の上を行ったり来たりしているのかを。これは店主との闘いなのだ。店主には「おぬし、なかなかやるな」と思わせなければならない。

ところが、大三巴街の家具店はどこでも、店主らしくないおばちゃんが店頭に出て、暇そうに店番をしている。Pet は既に臨戦態勢に入っていたのに、少し拍子抜けである。まずいくつかの店に入って目ぼしいものをチェックすることにした。