1987年にシングル「フェイシア」、アルバム『FENCE OF DEFENSE』の同時リリースでデビューしたFENCE OF DEFENSE。個々がスタジオ・ミュージシャンとして名が知られていたこと、当時西村麻聡さんと山田亘さんの2人はTM NETWORKのサポートをしていたこともあり、デビューは多くの注目を集めました。1988年に読売テレビ・日本テレビ系アニメ「シティーハンター2」のオープニング・テーマとして起用された「SARA」がヒットしたことで、バンドも更なる脚光を浴びます。その後も1991年にテレビ東京系アニメ「横山光輝 三国志」のオープニング・テーマとなった「時の河」、1992年に同じアニメのオープニング・テーマとなった「DON'T LOOK BACK」もヒットします。そんな状況でも、バンド活動、そして個々のスタジオ・ミュージシャンとしての活動をする3人でしたが、1993年にポップな作風となったアルバム『SPEED OF LOVE』を発表します。その先行シングルとなったのが、この「もう一度EMOTION」でした。
作詞はTMの「Come on Let's Dance」などを手掛けた作詞家でイラストレーターの神沢礼江さんが書いています。曲は一度距離を置きかけているカップルが、もう一度愛を確かめるまでを描いたラブソングとなっています。
「いつから閉じ込めてた 互いを思う言葉まで」
「また来る季節に流され 俺達すれ違いそうさ」
俺と君はカップルなんですが、ある時ふとしたことで倦怠期に。お互いを思う言葉を急に言わなくなるなど、日常最低限の言葉しか交わさなくなってしまいます。きっかけも掴めないまま季節だけが通り過ぎてしまい、本格的にすれ違いそうになってしまっています。
「会うたび笑えた日々や なじりあった夜さえも」
「過ぎ去る時間(とき)のせいにして 過去(きのう)に埋めたくはない」
お互いが会って他愛もない会話で笑い合っていた楽しい時間、ふとしたことで喧嘩になってしまった辛い時間。それらもひっくるめてカップルにとっては良い思い出となっています。それらの思い出を、そのまま過去の思い出として埋もれたものとは、俺はしたくないと思っています。まだいくらでもやり直せると信じているからこその行動ですね。
「ふたりもう一度EMOTION 今ならきっとできる」
「ためらわずに すべて受けとめて」
今がチャンス!今ならきっとお互いがよりを戻せるときです。両方とも思っていることを言い合って、すべて受け止めようとしています。
「ふたりもう一度EMOTION 素直な言葉に変えて」
「まっすぐに また伝えあおう」
素直になりきれないふたり。お互いの目を見て、素直な言葉で、まっすぐに伝え合おうとしています。
「同じ空見ていても 別の色感じてる」
「たやすく分けあえないから 俺達まだ知り合えるさ」
ふたりが距離を置いていた時。同じ空見ていても、離れているから俺は青空でも、君は曇天の空を見ているかもしれません。これでは同じ気持ちを共有出来なくて寂しく感じてしまいます。気付けばお互いのことがまた気になりだすのです。
「ふたりもう一度EMOTION 出会った頃のように」
「どこまでも ときめいていたい」
そして場面は変わってもう一度愛を伝える場面に。寂しかったふたりはもう一度、出会った時のようなときめきを感じていたのです。そしてこのときめきをずっと続けていたいと言います。
「ふたりもう一度EMOTION 素直な笑顔に変えて」
「まよわずに また信じあおう」
強張っていた表情も、お互いが思いを伝え合い、ときめきを感じるにつれ、どんどん柔和な表情に変わっていきます。笑顔になっていけば、お互いがまた信じあえます。
「ふたりもう一度EMOTION 今ならきっとできる」
「ためらわずに すべて受けとめて」
「ふたりもう一度EMOTION 熱いまなざしに変えて」
「いつまでも 忘れずにいたい」
そしてふたりはもう一度愛を感じあい、お互いを想う気持ちがより強くなります。この気持ちをもう忘れずにいたいと決めます。
「もう二度と 離したくはない」
そしてふたりが熱い抱擁をして、「もう二度と離したくはない!」と気持ちをぶつけて、この歌は終わります。
ミディアムテンポのバラードで、北島健二さんのエレクトリック・ギターはディストーションを効かせたロックなトーンと、アルペジオを使ったクリーンなトーンを使い分けており、歌をより盛り上げるのに一役買っています。山下達郎さんや織田哲郎さんなど、多くのミュージシャンが絶賛したギターソロも健在で、心地よさを醸し出しています。山田亘さんのドラムは手数こそ多くはないのですが、歌心を理解した正確なリズムの演奏、スネアの音色もとても気持ちがいいです。西村さんはベースとシンセサイザーを担当。8ビートのシンプルなベース・ラインですが存在感を示しています。そして重要なシンセサイザーの音色はよりポップな印象を与えています。西村さんの歌唱、北島さんのコーラスも共に抜群です。
この曲を知ったのは今年に入ってからで、聴いた時に「とても良い曲!」と感じました。FENCE OF DEFENSEの曲の中ではあまり知られていませんが、名曲です。聴いて欲しい一曲です。