本日はMr.Children「LOVE」(1993年リリース、アルバム『Versus』収録) です。
デビューから約1年4ヶ月。早くも3枚目のアルバムとなったのがこの『Versus』でした。このアルバムのレコーディングにおいては、山梨・山中湖においてセッション合宿を行った後、東京都内でプリプロダクションをした後、初の海外レコーディングとしてアメリカ・ニューヨークでレコーディングを行っています。但し、一部の曲は前作同様、前作『Kind of Love』で行っていたヒルトン東京のスイートルームを貸し切ってレコーディングをしていました。前作は桜井和寿さんとプロデューサーの小林武史さんがヒルトン東京のスイートルームで籠って制作していたこともあって、バンド感が比較的薄く、代わって小林さんが制作に大きく関与したこともあって、曲そのものの質は高いもので、「歌を聴かせる」というような印象のアルバムに仕上がったそうです。そんな前作の反省を活かして歌だけではなく、ひとつひとつの楽器の音の必然性とかを考えて作ったと桜井さんは話します。タイトルの『Versus』は前作の流れを継ぐポップな曲とセッション主体で作られたバンドサウンドの曲が対 (Versus) になるよう半分ずつ収録されていること、己の内面での矛盾した2つの要素が戦い合っていることに由来しているそうです。
そんなアルバム曲の中の一つがこの「LOVE」でした。
この曲は微妙な関係の男女の愛を表現したものです。
「偶然だね、こんな風に会う度に 君は変わってく」
僕は想いを寄せる意中の君に、「偶然を装って」街で幾度も遭遇するのです。会う度に君はどんどん変わってい来、大人っぽい雰囲気となっていくのです。
「見なれない そのピアスのせいなのかな?」
「ちょっとだけキレイだよ」
どうも雰囲気が変わったなと思ったのは、君が着けているピアス。初めて見た君のピアス姿に「ちょっとだけキレイだよ」と一言。本当は君のことが好きなのに、照れ隠しから「ちょっとだけ」と言っているのがもどかしい印象を持ってしまいます。
「彼になる気もなくて 責任などさらさらさ」
「でもね 少し胸が苦しい」
この「たまに会って他愛もない話」をする関係が僕にとって心地良いのか、彼になる気は無いんだ。万が一間違いが起きても、責任など取らないよとチャラい感じが透けて見える僕。しかし、想いを寄せていることもあり、変わっていく君を見ると、心苦しく胸がズキッとくるのです。
「なにげなく なんとなく 他の誰かに 君を染められるのが気にかかる」
やはり誰かの手によって、君が変わって染まっていく姿は嫌だなと感じているようです。嫉妬みたいなものでしょうか。気にかかると言ってますが、本当はかなり嫌なんでしょう。
「かなりカンの鋭い僕の彼女を 怒らせるのもなにか違ってる」
······ん?「僕の彼女」!?
おいおい、「僕」は彼女がいるのかい!!! ということは、彼女持ちなのにさらに想いを寄せている人が居ることになります。「怒らせるのも」と言っているので、彼女が居るにも関わらず「別の女性にも手を出そうとしている」という、かなり軟派な男が主人公であることが、この部分でよくわかります。というのも、桜井さんはこの曲の歌詞を「この娘もいいな、あの娘もいいなって気持ちをそのまま書いた」と話しており、事実その気持ちがこのサビに現れています。いやいや、浮ついたら当然怒られますよ。
「燃えるような恋じゃなく ときめきでもない」
「でも いつまでも君だけの特別でいたい」
本命の彼女の方が当然、燃えるような恋も経験しており、ときめきも強かったに違いありません。だからこそ、君への恋心は「そこまでの本気度は無い」ことを示しています。でもかといって他の男のものにされるのは嫌だから「君だけの特別でいたい」ということなのだと思います。
田原健一さんのエレクトリック・ギターの存在感が強く、リード・リズム共に曲を通して目立ちます。そのロックっぽい印象と、小林さんのピアノ・シンセサイザーのポップな印象が共存したポップスです。サビの展開は山中湖での合宿の際に考えられたそうです。
後にベスト・アルバムに収録された程の初期の人気曲。ラブソングですが、なかなか浮ついた一曲。····まぁ、これも「一つのLove」なんですかね。人それぞれの愛がありますので…。私はどうかと思いますけど、曲の話なのでお許しを。