Periodの向こうへ。チェッカーズ「Jim & Janeの伝説」 | よねともが気ままに思うブログ

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本日はチェッカーズ「Jim & Janeの伝説」(1988年リリース) です。




1983年のデビューから、破竹の勢いでヒット街道を歩み、藤井郁弥(現・藤井フミヤ、チェッカーズ在籍時代は本名名義だったが、以降はフミヤと記す) さんのルックスもあってアイドルバンドとして見られていました。初期は作曲家の芹澤廣明さんが作曲・編曲、作詞家の売野雅勇さんや康珍化さんが作詞を手掛けた作品が多く見られたこともその一因だと思われます。1986年にチェッカーズメンバーによる作詞・作曲へ路線変更を行っていますが、デビュー初期からアルバム曲を中心に作詞・作曲を手掛けていました。

作詞はその大半をフミヤさんが担当していましたが、作曲は各メンバーが分担して制作していました。主に藤井尚之さん(サックス)、鶴久政治さん(サイドボーカル)、武内享さん(ギター)、大土井裕二さん(ベース) の4人が担当していましたが、シングルA面曲に採用されヒットした曲の多くは尚之さんと鶴久さんが作曲したものでした。

先述したように1986年にメンバーによる作詞・作曲を本格的に行うようになり、尚之さんが作曲したシングル「NANA」がその第1弾となりました。「NANA」のヒットもあってオリジナル化移行後も人気が落ちること無く、ヒット曲を量産することになり、1992年の解散までバンドが一線級の活動を続けられました。1988年にはその年に落成した東京ドームにてライブを行ったことが話題となりましたが、その時期にリリースされたのが、この「Jim & Janeの伝説」でした。

この曲はフミヤさんが当時流行していた紡木たく氏の漫画「ホットロード」に感銘を受けて、それを基に歌詞を書いたと話しています。


「ホットロード」

「ホットロード」は、「別冊マーガレット」に連載された少女漫画でしたが、主人公が当時若者に多かった暴走族に憧れて不良の道に進み、惹かれる相手も不良で後に暴走族のリーダーとなるなど、流行の最先端を取り入れながらも、少女漫画としては異端な設定で人気を博している漫画として有名です。2014年には実写映画となったことも話題となりました。(但し、主題歌は「ホットロード」をモチーフにした「Jim & Janeの伝説」では無く、何故か尾崎豊さんの「OH MY LITTLE GIRL」でした) 

歌詞も主人公・宮市和希と、春山洋志をモチーフにしたもので、それぞれ「Jane」と「Jim」に置き換えて作られています。曲中にバイクのエンジン音が流れるのも、「ホットロード」のオマージュであるとも言われています。

We used to dream to be like Jim & Jane, Who are in our heart forever
   (俺たちはJimとJaneのようになりたいと憧れていた。2人はいつまでも俺たちの心の中にいるんだ)

イントロと同時に、フミヤさんの英語によるセリフから始まります。あくまで「ホットロード」を基にしたので、物語そのもののラストとは関係ありません。この歌のセリフは、既に今は去った2人の勲章を、俺たちも心の中に刻んでいくんだという表れが出ています。

Jane oh Jane 泣いちゃだめだよ
もう約束したはず

JimはJaneに対して泣かないで呼び掛けています。Jimの身に何かあったのか、親元を離れて来た悲しみなのか、ここで色々な想像が膨らみます。

Jim oh Jim 許してくれよ
連れてきちまった お前のSteady

JaneもJimの事を呼び掛けています。Jimは再びJaneに対して話しており、「お前の安定した未来を奪ってしまった」と後悔とも取れる発言をしています。しかし、Janeはそんなことを気にしていません。Jimと一緒に居られるだけでいいのです。

Oh Clash night 三日月のHighway
Oh White rose 壊れたGuard rail

「ホットロード」を読んだことのある方なら解る描写かもしれませんが、物語の終盤、春山は和希を想って別れることになり、ライバルの族との最後の決着を付けるため、タイマンで単車を走らせますが、不注意で大型トラックと衝突し、意識不明の重体となります。この歌詞はそれをモチーフにしたのでは、と思います。

動かない瞳が 静かに濡れてゆくよ

春山は意識不明の重体。事故を知り駆けつけた和希。こことリンクするように、この「JimとJane」の物語も、Jimを想うJaneの「助かって!」という願い、そしてその涙が、動かなかった瞳を動かす原動力になったのです。

さよなら告げる 長い髪を靡かせ
やつの背中 抱いて 走り抜けた日々に

JaneはJimと共に生き抜く覚悟を決め、安定を捨てて厳しい現実に身を投じました。それはJimの背中に憧れ、そして2人乗りして走り抜けた日々が楽しく、そして想いがあったからこその決意でした。

風に風に風に誘われ あいつは行っちまった
戻れないLovers Jim & Jane

そしてバイクに跨がる2人は、風の吹くままに走り去っていきました。もうヤンチャで済んだ子どものような2人には戻れません。例え茨の道であろうとも、2人は支え合って生き抜いていくのです。

作曲は鶴久さん。当時から岩井由紀子さんのシングルに楽曲提供するほど、メンバー随一のメロディーメーカーであり、この曲にもその片鱗が窺えます。メロディアスながらもロックなサウンド。キーボードやギターの使い方が上手いと思います。アレンジは「THE CHECKERS FAM.」となっていますが、これはチェッカーズとキーボーディスト・八木橋カンペーさん、パーカッショニスト・アンディ檜山さんによって構成されたアレンジ集団となっています。武内さんのエレクトリック・ギターはリードギターではなく、リズム・ギターとなっていますが、音色がとても良く、チェッカーズのサウンドに合っています。大土井さんのベースは太い音が特徴で、徳永善也さんのドラミングと共にサウンドの根幹を支えています。キーボードは八木橋さんと鶴久さんが演奏しており、メロディアスなサウンドを展開しています。イントロ・間奏・アウトロの尚之さんのサックスも鳥肌が立つような音色ですが、どこか悲しげにも聴こえます。パーカッションはアンディ檜山さんによるものですが、音楽番組では高杢禎彦さんがオクタパッドでパーカッションの音を出していました。

2番のサビの歌詞に「行こうぜ Periodの向こうへ」という歌詞がありますが、この歌詞をキャッチコピーとして用いたのが、ロックバンド「氣志團」で、今では氣志團を指す有名なフレーズとなっています。ですが、元はこのチェッカーズの曲。多くのリスナーに影響を与えた、チェッカーズ随一のメロディアスなロックだと思います。



こちらはテレビ朝日系「ミュージックステーション」出演時のものです。


そして、歌詞をキャッチコピーにした氣志團によるリスペクトを込めたカバーも載せておきます。完成度は高いです。鶴久さんのキーボードと尚之さんのサックスは西園寺瞳さんのギターに置き換えて演奏されています。冒頭のセリフは西園寺さんが担当しています。叶亜樹良さんのドラムは徳永さんのドラムをフィル含めて忠実に再現しています。そして團長・綾小路翔さんの歌唱にもリスペクトが伝わります。こちらも是非。