本日はサザンオールスターズ「心を込めて花束を」(1996年リリース、アルバム『Young Love』収録) です。
「原点回帰」をキーワードにし、バンドサウンドで作られた『Young Love』ですが、最終曲となるこの曲は、コンセプトとは離れたフルオーケストラで作られた曲でした。
この曲が作られるきっかけとなったのは、1985年4月3日に行われた、ラッツ&スターのメンバーの合同結婚式でした。
ラッツ&スターのボーカル4人と、ドラムの新保清孝さんの5人が、東京・赤坂の日枝神社にて合同結婚式を行い、当時話題となりました。結婚式には親族や芸能関係者が多く出席されましたが、桑田佳祐さんは原由子さんと共に媒酌人を務めました。これはラッツ&スターのリーダー、鈴木雅之さんと親交があったことから務めたそうです。桑田さんはたまたま鈴木さんの父親と話す機会があったそうで、その時の会話がこの「心を込めて花束を」が生まれるきっかけとなりました。
歌詞は結婚式における感謝の言葉を「僕」が綴ったものです。
「夢追う無邪気な子供の頃に 叱られた理由(わけ)が今解るの」
「今日まで幸せくれた パパとママに花束を」
ここまで育ててくれた両親に、何故怒られたのか。その理由が大人になってよくわかる年になりました。その両親への感謝を訥々と述べています。
「若さにまかせて家を出た時 励ます言葉が身に沁みたよ」
「どんなに背伸びをしても 腕の中で甘えてた」
自立して1人暮らしをするために、実家を出るとき。心配する我が子を思い励ます言葉をかける両親。その言葉が今でも心の中に残っているようです。
「期待通りの僕じゃないけど 素晴らしい女性(ひと)に出逢えた」
「もしも涙が溢れそうなら 御免よ 何も言えなくて」
伴侶となる女性に対して、全て期待通りとはいかないし、理想通りでもない、それでも素晴らしいあなたに出逢えて、「本当にありがとう」と、そして言葉が詰まったらゴメンね、と話しています。
「笑顔の中には淋しさもある 幸せの旅を憂うばかり 愛する女性(ひと)となら 辛いことも分け合える」
結婚した反面、両親と離れることに対する寂しさも勿論あります。それでも伴侶と一緒なら辛いことも分けあって一緒に歩いていけると宣言しています。
「心を込めて花束を」
最後はここまで育ててくれた両親に花束をプレゼントして、この曲は終わります。
先述したようにフルオーケストラによるサウンドになっています。サザンのメンバーはレコーディングには参加しておらず、曲中のピアノも原さんによるものではありません。このフルオーケストラアレンジを施したのは、ザ・ピーナッツ「恋のバカンス」「ウナ・セラ・ディ東京」やささきいさおさんの「宇宙戦艦ヤマト」などを作曲した、1960年代~1970年代を代表する作曲家、宮川泰さんによるものです。
桑田さんはこの曲の作曲時から「シャボン玉ホリデー」(日本テレビで放送されていた渡辺プロダクション制作の音楽番組。宮川さんも音楽を担当していた) のようなサウンドで展開しようと決め、宮川さんを起用したそうです。
フルオーケストラでサザンのサウンドはほぼありませんが、桑田さんの歌唱も含め、アルバムの有終の美を飾るに相応しい曲です。