土曜日の夜はにぎやか。山下達郎「土曜日の恋人」 | よねともが気ままに思うブログ

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本日は山下達郎「土曜日の恋人」(1985年リリース) です。




この曲はアルバム『POCKET MUSIC』の先行シングルとして発売されました。本来はこのシングルが発売された翌月にアルバムが発売される予定でしたが、制作が遅延したことで86年4月にアルバムが発売となりました。『POCKET MUSIC』にはド頭1曲目に収録されています。

元々は60年代の作曲家、スナッフ・ギャレットのような作品を作りたくて以前から構想していたものの、デジタルレコーディングによる環境変化で望んでいるような音が出せずに苦労したといいます。結果的にシングルのミックスで納得がいかず、『POCKET MUSIC』では再度リミックスを行い、アルバム・ミックスで収録されますが、こちらでも納得が出来ずに1995年のベスト・アルバム『TREASURES』でまたリミックスしてようやく納得のいく作品になったといいます。

演奏時間は3分程と、小品並みに短いながらも、この3分間だけで土曜日の夜の賑やかさと華やかさを表現している、まさに山下達郎の作品の奥深さと編曲の完成度の高さを表している作品だと思います。プログラミング、エレクトリック・ギター、アコースティック・ギター、グロッケン、パーカッションと間奏の口笛は達郎さんによるもので、ドラムは青山純さん、ベースは伊藤広規さん、ピアノとチェレスタは難波弘之さん、ハープは大瀧詠一さんのナイアガラ作品でもお馴染みの山川恵子さんによる演奏です。

歌詞は土曜日の夜に駆け出す恋人たちを表現しています。

降り出した雨と 動き出す街の灯
立ち止まる君に ようこそ!

雨が突如降りだし、それに伴い動き出しているような街のネオン。歓迎されているような雰囲気ですが、呆気にとられる君に対して僕は一言「ようこそ!

土曜日の夜は 始まったばかり
まるで僕達の愛の様な ざわめき

賑やかな街のネオン。今日は土曜日。明日は日曜だから夜深くまで遊べる。まだまだ遊びは始まったばかり。街の賑やかさは、これからの僕達の想いをドキドキさせるようなざわめきと同じものでした。

微笑んだ君は やわらかい宝石
見つめる僕は さみしがりやの ゆれるアンブレラさ...

達郎さんの歌詞に出てくる女性は、基本的には幻想的な女性像です。この曲もその微笑みを「宝石」に例えています。しかも、固いものでは無く、「やわらかい」と表現し、暖かみのある優しい女性を表しています。一方で男性は対称的で、「さみしがりや」と自己分析し、女性が居ないと生きていけないと甘えている感じにも受け取れます。

ネオン色のレインコート 走り抜けて行く
ごらん 永遠の夢が ほら 開いた

「さみしがりやのゆれるアンブレラ(傘)」だとダメだから、一緒に行くには「レインコート」が良い、ということでしょうか。レインコートを羽織った2人はネオン色の街並みを抜け、永遠の幸せへと向かっていきます。

IT'S JUST COME FOR YOU AND ME, OH GIRL SATURDAY NIGHT
(土曜の夜は僕と君の為にあるのさ!!)

土曜日の夜は、まだまだ長そうです。

さて、『POCKET MUSIC』のデジタルへの苦心は「風の回廊」にも書いているのでここでは書きません。ここではこの曲の「タイアップ」について少々。

この曲を聴いたことのある方はピンと来ると思いますが、この曲はフジテレビ系バラエティ番組「オレたちひょうきん族」のエンド・テーマとして採用されました。達郎さんはこの曲を書いた時に、「ひょうきん族」のイメージに合うと思い番組に売り込みをかけた所、採用されたそうで、1985年10月~1986年9月までの1年間使用されています。


ひょうきん族メンバー。ビートたけしさん、明石家さんまさん、島田紳助さんらの姿が確認できる。

「オレたちひょうきん族」は、1981年~1989年に放送された伝説のお笑い番組で、土曜日20:00に放送されていました。当時の漫才ブームの余波、フジテレビの「楽しくなければテレビじゃない!」などの制作方針もあり、スタッフが当時の人気お笑いタレントを多く起用し、コントやコーナーを作り込んで、当時真裏に放送されていたTBS系「8時だョ!全員集合」に打ち勝つ番組として制作されました。出演者にはビートたけしさん、明石家さんまさん、島田紳助さん、山田邦子さん、片岡鶴太郎さん、西川のりおさんなど、東西のお笑い芸人を組ませる当時としては斬新なスタイルでした。当初は苦戦しましたが、たけしさん・さんまさんの名物キャラ「タケちゃんマン」「ブラックデビル」や紳助さん司会の「ひょうきんベストテン」、そして番組最後の「ひょうきん懺悔室」などが人気になると徐々に視聴率で「全員集合」を抜くようになり、「全員集合」を終わらすまでになりました。

しかし、「全員集合」終了後始まった加藤茶さんと志村けんさんの「加トちゃんケンちゃんごきげんテレビ」が人気になり、さらにたけしさんの「フライデー襲撃事件」以後のたけしさんの番組に対するモチベーション低下などの複合的な要因もあり、最終的にさんまさんの「辞めましょう」の一言で番組が終了となりました。終了後、たけしさん・さんまさんは「BIG3」の一角を担うお笑い芸人に、邦子さんは冠番組を多く持ち「唯一天下を取った女性お笑い芸人」と称され、紳助さんは多くの番組で司会を務めることに、片岡鶴太郎さんは俳優で人気を博すなど、各自が頭角を表すことになりました。

この「土曜日の恋人」は「ひょうきん族」絶頂期のエンド・テーマでした。懐かしい方も多いのでは?

※自身のLINEのタイムラインの投稿を一部編集して再掲。