ある時期、
何度も何度もみた夢がある。
私は家族と家の中にいて、
窓から外を眺めてる。
家の外では、
大事故や大災害が起きている。
私は驚いて
それを見ているけれど、
私が居る家の中は、
決して被害が及ばない
平和な安全地帯なのだった…。
がん検診で引っかかってから
診断と治療法が確定するまでの期間。
こんな夢を何度もみた。
まだ病の得体が知れず、
未来の見通しが立たず、
最も闇に飲まれていた時期のこと…。
・
何度も繰り返される夢。
その夢の意味は、
うすうす分かっていた。
"自分の外側の世界で
どんなに嵐が吹き荒れても、
自分の内側の心の世界で
平穏、静寂でいることは可能だよ"
そんな、夢から私へのメッセージ。
この考え方は
病気になる前から知っていて、
職場や家庭でのトラブルや
人間関係で行き詰まったとき、
私は、よくこの考え方を思い出しては
グラつく自分の心を
立て直してきたものだった。
現実に起こるゴタゴタから
自分の心を切り離し、守る術。
わりと鍛錬してきた方だと思う。
しかし。
今回ばかりは、
そんな考え方できなかった。
そもそも、
自分の体に生じた病のことを
「自分の外側の世界のこと」なんて、
到底思えない。
だって体って「私そのもの」じゃないの?
「自分の内側=心」と、セットじゃないの?
「私そのもの」が緊急事態なのに、
心を切り離して平穏に、なんて
できるわけがないじゃない…!
…けれど。
同じ夢は、
何度も何度も繰り返された。
もしかしたら…。
自分の体に生じる病すらも、
「自分の外側」のことなのかもしれない。
心と体は、切り離せるのかもしれない。
頭では
そうかもしれないと思いつつも…。
心では、
とてもそうとは思えなかった。
・
今、闇の中にいるがん患者さんへ。
体調が悪ければ、心も塞ぐし、
心が不穏であれば、体調もすぐれない。
心身相関は必ずあって、
それは、人間誰しも当たり前のこと。
それでも。
病の中、
心穏やかでいたい
心に光を見出したい
と願うなら…。
体で
どんな大嵐が吹き荒れようとも
心の中が平穏・静寂であることは
可能だと
知っていてください。
ただ、知っていてください。
そうかもしれないと思うことが、
私の心が光を見いだす
始まりだったように思うから…。
