最後の羽を





 嗚呼、もう指もまともに動かなくなりつつあるのです。

 

 急がなければ、ならないというのに。紅葉が散る前に、冬がくるまえに。


 でもこれさえできれば、お薬の代金に足りるはずなのです。




 ―――





 結局、最後まで、あなたに真実を告げることはできませんでした。


 怖かったのです。


 でも、これで終わります。


 さあ、最後の羽を・・・・・・・・・。







 「いつか私が人じゃなくなっても、あなたは、私を愛してくれますか」



 そう、独り言のように寂しい声がつぶやいとのを聞いた気がして、目を覚ます。


 くらむ頭と重い体を押して起こせば、布を一反、入口近くに置く鳥が目に映った。


羽をすっかり失い、痛ましい姿をしてその鳥は、僕の視線に気付くと、その身を恥じるように逃げようとした


 病に侵された体を必死に動かし、翼をなくして羽ばたくことすら上手くできないその鳥を腕の中に封じる。



 「当たり前だよ」



 僕は笑う。腕の中の君には見えていないと知りつつも、安心させるように、慰めるように。初めて出会


ったあの日のように。


 覚えている。


 あの雪の日、人の姿をした君が、変わらぬ澄んだ瞳で僕を見つめる君が。また、僕の前に現れた。


僕は君があの日の鶴だと気づいていながら、気づかぬふりをした。知られれば君が去ってしまう気がして


君を傍に留め置くために。



変わらず君を。







 ―――愛してるよ。









 

 

 冷たい手




 季節が流れ、鈴虫がリンと鳴く頃になってもまだ、反物を売って稼いだお金はお薬を買うには足りません。


 機を織り続け、羽を抜き続ける私の手は、今や傷だらけになってしまいました。ただ織る反物に血がつ


かぬようにと、それだけを気をつけて、構わず機を織り続けます。


 機の手を止めるのは病に伏せるあなたの世話をするときだけ。あなたの傍らに座り、咳き込むあなたの


背をさすります。すっかりやつれてしまったあなたの背中から伝わってくる骨の感触が、私を急かします。


 ある日、あなたのお顔を拭う私の手を、あなたがそっと握りました。



「綺麗な指だね」



 と、傷だらけになった私の指を、いたわるように、包み込むように、握ります。


 嗚呼、その手があまりにも冷たくて、凍えるように寒かった冬の日ですら、暖かく私の手を握ってくれた


その手が。


 あと、如何程の時間が残されているのでしょうか。あなたに、・・・・・・私に。



「いつか綺麗な指がなくなっても、それでも私を・・・愛してくれますか」


 あなたは咳き込みながら、


「当たり前だよ」



 と言ってくれます。そうして大きな手に包まれていると、手の痛みすらなくなる気がするのです。


 あなたが綺麗と言ってくれたこの指が、声がなくなっても、どうかあなたのこの手だけは残してくださいと


祈らずにはいられませんでした。




 移ろう季節が、はらはらと落ちる木の葉が、私を急かします。昼も夜も、寝る間も食事も惜しんで機を


おっても、あなたはみるみるやせていきます。


 早く、早く・・・・・・。


 私の羽も残りわずかをなり、人としての私の姿も揺らいでゆきます。


 あなたの具合もますます悪くなり、私もまともにみることすらほとんどしません。人としての姿が薄れゆく


今、それがあなたの目に触れぬことに少しだけ安堵をしながら、早く薬を買わなくてはと、私は焦る。


 人の前に出れなくなる前にと、私は街に出ました。いつも私が織った反物を買って下さっている反物屋を


訪れます。これまでに織ったものを差し出してお金に換えてから、頼みました。


 どうか、どうかこれからはこちらの家に来てはいただけないでしょうかと。出来上がったものは入口の


すぐのところに置いておきますから、と。そうして家に場所を伝えました。


 私の織った物を良いものをお褒め下さる反物屋の主は、快く承知してくださいました。そうして私は、


私の身まで案じて下さる親切な主に、もう一つお願いをして、あなたの待つ家へと帰りました。

 濃い影




 日差しがみるみる強くなります。じりじりと肌を焼かれるかのような暑さにも、日の光と影の明暗の強さに  


も、何やらくらくらしているよう。芽吹きの春に柔らかな瑞々しさを堪えてきた草木も、濃く鮮やかな緑を、


いっそ荒々しいまでに生命を主張します。

 

 嗚呼、あたりはこんなにも生命に満ちているのに、暑くなっていく中、貴方が咳き込むことが多くなりまし


た。案ずる私にあなたは「何でもないよ」と答えます。



 「風邪でも引いたかなぁ」



 と、笑いながら。

 


 けれどもそれは、本当に風邪ですか?どうしてここまで咳が長引くのですか?段々と食が細くなっては


いませんか?やつれていっては、いませんか?

 

 思えども私には何もできずに、・・・いいえ、違います。怖かった。あなたの身に起こっていることが怖くて


怖くて、何でもない、と言うあなたの言葉に不安を抱いてしまったのです。見て見ぬふりをしてしまったの


です。嗚呼、私は本当に、愚かでございました。そうすればきっと何でもないことに出来ると、思い込んで


いたのです。せめて早いうちに、お医者様を連れて来れば・・・・・・。







 青葉が照らす暑い暑い夏の午後。私は倒れ伏したあなたを見つけました。


 走って走って、お医者様を呼びに行きます。小さな小さなこの村にはお医者様はいないのです。お医者


様を呼ぶには、山無効まで行かねばなりません。息が切れ、足が擦り切れても私は走り続けました。こん


な痛みが一生なんだというのでしょうか。こうして走っている間にも、あなたが、あなたの命が、途切れて


しまうかもしれないのに。


 心が焼き切れてしまいそうな焦燥の中でやっとのことお医者様にきてもらい、あなたの具合を見てもらい


ました。


 お医者様は言いました。あなたの病は治ると。適切なお薬を飲めば淡々と良くなるのだと。


 ・・・けれどもそのお薬は、とても、とても、高額でした。お医者様を及びしただけで、私たち夫婦のわずか


な震えは尽きてしまいます。お薬を買うだけのお金など、徹底用意することは叶いません。


 お薬を頂くことはできませんかと、頼んでもそれは無駄となりました。お薬の代金は一生働いてでも


返しますと言ったところで、どうにもなりませんでした。お医者様にはわかっていたのです。


 例え私たちのような貧しい夫婦が一生身を粉にして働いたところで、用意できるはずのない額だったの


です。


 お医者様は帰って行きました。あなたの命は持って冬まで・・・と言い残して。


 それから少しして、咳き込む声と共にあなたが目を覚ましました。苦しげな咳の合間に、それでも変わら


ぬ優しい声で、



「心配かけたね。大丈夫、すぐに良くなるから」


 というあなたに


「ええ、きっと良くなります」


 と、私は答えました。


 次の日私は、糸を買いに街に出ました。




 カラカラカラ・・・カラカラカラ・・・


 どこか物寂しい音を響かせながら、規則正しく機を動かします。伏せるあなたの隣の部屋で、私は


ひたすらに機を織ります。


 私は知っておりました。私のようなものの羽を織り込んだ反物は、とても人の心を打つのです。遥けき昔


から、それのために人に捉えられた私の同胞が、どれほどいたことでしょう。だから羽一枚、抜き


取っては、織る布の合間合間に織り入れます。ひとおり、ふたおりと、布を織っては、また一枚、二枚と


羽を抜きます。


 羽一枚抜き取るたび、私の体には痛みが走ります。あなたの傍らにいるための姿を保つ力も、この羽に


授かったもの。一枚、羽を抜き取るたびに、少しずつ、その力が失われていくのがわかります。


 けれどもあなたを失ってしまっては、この姿には何も意味もないのです。


 儚き紅葉の葉のように、あなたの命を散らせはしません。














 決して。



 




 歓びを歌う。



 

 雪が溶け、徐々に暖かくなる中、木に、地面に新芽が芽吹いていきます。やがてすっかり暖かくなり、若


葉萌ゆる春が巡ってきました。すう・・・と吸い込むその空気の中にさえ、命が満ちているかの様。


 春に生える草木だけではありません。獣も、鳥も、等しく命を栄えて春を寿ぐのです。私は春の喜びに、


鳥たちが歌うのを聞きます。生めよ栄えよ歌え舞え。人には知られぬ鳥たちの歓喜の声を聴きながら、私


も声高らかに歌います。あなたに教わった歌を、春の歌を。


 私の歓喜が、鳥たちにも伝わるのでしょうか。小さな庭に生える木に、家の屋根に、地面に、鳥たちが集


まって共に歌ってくれます。鷲が柔らかな声で歌えば、目白が愛らしく加わります。雲、雀、空に地面に軒


下に、皆が皆歌うのです。春を、命を。


 ふと、あなたが手を停めて私を見ているのに気づき、私は歌うのをやめます。鳥たちが一斉に羽ばたい


て、去って行きました。羽毛の舞い散る中、私はあなたの視線を感じます。


 嗚呼、今の光景を、あなたはどう思ったことでしょう。可笑しな娘だと思われてしまったでしょうか。変わら


ず妻と、思って下さるでしょうか。



「綺麗な声だね」




 あなたが言いました。その言葉にどれだけ私の心が震えることか。

 

 嬉しくて、嬉しくて・・・。


 あなたといるために、ただそのためだけに、この体はあるのです。この声も何もかも、全てが。だからあ


なたがこの声を愛でて下さるのなら、それは何より幸せなのです。


 でも、私は目を伏せます。



「いつか、綺麗な声が出なくなっても、私を愛してくれますか・・・?」



 怖いのです。あなたが愛でて下さる声は、神様があなたのそばにいるためにくださったもの。それを失っ


ても、あなたは私を愛して下さるでしょうか。



「当たり前だよ」



 そう言いながら、あなたは優しく笑います。そっと伸びてくる大きな手が私の頬をなでます。その温もりが


あまりにも愛しくて、私はあなたの手に私の手を重ね、頬を寄せました。


 嗚呼、どうか、どうか、いつまでもこの時が続いてくれますように。







 幸せすぎて、怖いのです。






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


―2―は長く続く場合です!

どんな性格の奴でもいいから

誰か俺と付き合えやあああああああ!!((



男の前では喋れる俺。

けれど女の前ではしゃべれない!


ちょっとしたトラウマなんだ!


話すかい?

俺、泣くぞ?←



「どうして彼女できないんすk・・・あ、ナンパ癖酷いッスもんね!

 すんません森山先輩!」


知るかよ。そして妙に酷いこと言ってんじゃねぇか。


「あ、私は・・・素敵だと、思いますよっ森山さんのことっ!」


「それなら俺と付き合ってくれないかい?」

「ぁ・・・えと・・・」


その苦笑い、

とっても綺麗ですよ?



・・・



もうお願いしますから誰かと付き合いたい。

いっそのこと男とでもいいから付き合いたい。







―――もう誰でもいいから!!!!!





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



流石森山w