ある日、何か社会貢献しないと、やる気になり、
ビニール袋を持って、外に出た。
ゴミ拾いをしようと。
自分は何かするべきだと。
何か役に立ちたいと。
しかし、家の周辺の道路を1分歩いただけで、何も拾わずに、
帰宅した。
ゴミがなかったわけではない。
ある家に、タバコの吸い殻が1本落ちていて、目に入ったが、
人目が気になり、拾えなかったのだ。
ああ、自分はなんて臆病者で小心者だろう。
誰も気にしてないし、誰も自分を見てないし、
人なんか気にしないで、拾えばよかったのに。
自分は負けたのだ。
何も拾わずに、帰宅したのだから。
あの1本のタバコの吸い殻。
頭に焼き付いて離れない。
『宮澤智秀の実話』