───玄関広場

「うーん.......どれもイマイチだな.......。」

いづみ「そうだね。あまりピンとこないというか。」

「だよなぁ。でもまあ、今後の公演の演目って大事なことだしそんなに簡単にも決められないか。」

いづみ「だね。それぞれ一度持ち帰ってまた話し合おう。」

「了解。それじゃ、ひとまず今日は解散。」

いづみ「うん、お疲れ様。」

───中庭

いづみ「うーん.......次の公演、何がいいかなぁ。やっぱりみんなにも楽しんで演じて欲しいし.......。」

「カントクさん、カントクさ〜ん!」

いづみ「そんなに急いでどうしたの、椋くん。しかも何だか大荷物だね。」

「カントクさんが演目について悩んでるって聞いて.......」

「これ!持ってきました!」

いづみ「この大量の漫画は.......。」

「ボクのオススメの漫画、厳選集です!」

いづみ「厳選集?」

「はい!」

「演目を考える役に立つんじゃないかなと思って!」

「例えば主人公とヒーローの出会いなら、この『リオンの絆』の67ページが参考になると思います!」

「それから胸キュン展開なら、こっちの『夢恋☆ハート』3巻の102ページがすごくいいと思うんです!」

「主人公とライバルのやりとりも重要ですよね!それはこの5巻の26ページの展開が最高で.......。」

いづみ(いつもの椋くんからは想像もつかないようなマシンガントーク.......)

いづみ「すごいね。ページ数まで覚えてるんだ。」

「はいっ!特にこの作品の男の子、王子様みたいですーっごくカッコイイんです!!」

「ボクもいつかこんな風になりたいなって何回も読んでるんです.......。」

「だから、いつでも何でも聞いてください!」

いづみ(椋くん、目がキラキラ輝いてる.......)

いづみ「うん。ありがとう。」

「カントクさんは、どんなタイプのヒーローが好きですか?」

「やっぱり優しくてカッコよくて、頼りになる感じの王子様ですか?」

「あっ、でもちょっと強引なとこがあるヒーローもいいですよね!何ならダブルヒーローでも.......。」

いづみ「ダブルヒーローか.......。」

いづみ「うん、それ面白そうだね。」

「本当ですか!?」

「役に立てたなら良かったです!」

「そうだ!他にも参考になりそうなものがあるので明日、家に取りに行ってきます!」

いづみ「そうな急ぎじゃないから大丈夫だよ。」

「ダブルヒーローものなら良いのがあるんです!今から電話してみて──。」

いづみ「そこまでしなくていいから!」

いづみ(椋くんの少女漫画への熱意恐るべし.......)

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