こんにちは。


読んだ本について書きます。


青空と逃げる 辻村深月 著


いつも同じ空の下で繋がっている


早苗は、一人息子の力と二人、四万十に移り住んできた。


彼女の夫がある事件に巻き込まれたことから、二人は、住んでいた東京にいられなくなったためである。


知人の聖子の嫁ぎ先である食堂で働いていた早苗であったが、そこにも、彼らが追いかけて来たことから、早苗と力は、四万十を離れることにした。


二人は、行くあてもなく、ただ、逃げるのであった。



早苗は、役者である夫の拳が、有名な女優の運転する車で事故にあい、さらに彼女が自殺してしまったことから、連日のマスコミや事務所関係者の訪問を受け、全てを捨てて息子と二人で逃亡をします。


誰も自分たちのことを知らない土地で、母として息子を守るため、二人で生きていくために、仕事や生活の場を見つけていく早苗の強さは、次第に息子の力をも変えていきました。


事件が起こった時、離婚しないほしいと母に懇願した力でしたが、様々な経験を経て、彼は、母に、離婚してもいいよ、と言うようになります。


母が倒れてしまうまで気を張って自分を守ろうとしてくれていたことに気がついた力は、自分の言葉で母を縛り付けていたのかもしれないと思ったのです。


控え目な早苗が、生きるために強くなり、何ごとにも体当たりで挑戦していったように、力も、早苗のピンチには、周囲の人に自ら助けを求めて走り回り、彼女を救うことができました。


事件が起きて、家族がバラバラとなり、両親も力も辛い想いをしてしまいましたが、この期間を経て、家族が再会を果たしたとき、この家族はこれまでよりも強く結び付いたように思います。


二人が拳を探して、最後にたどり着いた写真館は、辻村深月さんの他の作品にも登場します。

二つの作品において、この写真館は、行き場を失った人を受け入れる場所でした。

そして、新しい出発を決める場所でもあります。


写真館は、みんなの“あした”を作る、という言葉が印象的でした。


この写真館は、ここにたどり着いた人々にとっての希望を象徴しているのではないでしょうか。



早苗と力、そして、父の拳も、追われる身として、別々に逃げていた日々でしたが、三人はいつも同じ青空の下にいました。


三人は、口には出さずとも、お互いを信じ、繋がりあっていたからこそ、また家族となれるのではないかと思います。


ではまた。


 

 *本についての内容理解や見解は、全て個人的なものです。