お宮参りにいくにあたって、
産着を新調した。
70年ぶりの男の子でお宮参りの産着はない。
なんと、家紋を入れなきゃならないと聞き、
慌てて家探しする。
と、押入れの中に家紋入りの重箱を発見した。
しっかりした作りで、
良い家だったのだなあと思う。
仏壇の過去帳は享保年間から始まる
奈良興福寺の寺内町の中にあった私の実家の土地は、
入婿で入った私の父親の怠惰と浪費、
家付き娘の母親の無知無策でバブルの最中に
他人のものになってしまった。
あの土地があれば…
テナントビルを作れば家賃収入が入る。
ワタシはもっとラクして自分の好きな事を
出来たろう。まるで死んだ子の年を数える
未練がましさ。
失地回復はもう無理だろう。
親ガチャはワタクシ完全に負けである。
二人とも無能だ。
紋にまた目を写す。
この紋が家紋帳にはない。
とにかくない。似たのはあるが、微妙に違う。
紋屋が言うには、
この真ん中の5本枝が着物の紋を参考に
写した時に 本来ならまっすぐなのを、
“ 誤ってゆがんだ形で写したんと違いますか。”
誤って写すか。どこまでもボンヤリした家や。
家からは尼さんボンさんは出ているが、
殖産興業、商売に長けた人間のエピソードは
聞かない。
皇室に近衛兵までだしたが、
落馬して身障者になって帰ってきた。
かなり勉強が出来る男の子がいたが、
小学生くらいで病死している。
なんか不運さを感じる家系、
借金するくらいなら子供の教育は諦める、
それが奈良の旧家の考え方だったらしい。
それではアカン。父の里山口では、借金してでも
子弟には教育を受けさせろになる。
長州、貧乏下級武士の小倅がアレよアレよと
立身出世していくのを見ればそうなるのだろう。
伊藤をみよ、山縣をみよ。
ボンさん尼さんだけ出して
潰れるべくしてツブレル家だったのか。
“ 紋はね、変えても良いですよ。枝が
まっすぐのタイプにしますか?"
えーそれ私が決めるの。
色々迷った挙句現行のまま
産着に染め付けた。
お宮参り2日前にギリギリ間に合った。
ありがたい。キレイ。
こんな儀礼事に金を使えるようになるとは。
そして、
一族の結束を確かめようと思うようになるとは。
私はお宮参りの段取りしながら、
“ ゴッドファーザー” 第一作の結婚式シーンを思い出す。
アレは単なるイタリアヤクザの話ではない。
家族の物語だ。
この世の中には、ややこしい世間から体を張って
金を取りにいける人間と、そんな人間にぶら下がって
生きなければならない人間と、割合は違えど
二色に別れる。前者は往々にして孤独である。
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