昨日はハイキングクラブの計画で、青梅市の「塩船観音から霞丘陵」を歩く予定だったが、朝から雨が激しく降っていたので中止になった。
それにくらべて、今日は朝から太陽がガンガンと照りつけ初夏の気配を漂わせている。昨日の食料もあることだし、どこか近間へツツジ見物にでも・・・と思い立ち、越生の五大尊へ出かけることにした。

五大尊とは五大明王の尊称で、不動明王のほかに金剛夜叉など五体の明王が祀られている。山麓を彩るツツジは、享保年間(1716~36)の植栽と伝えられ、平日でも訪れる人の数は多い。
入り口で200円の協力金を払い、園内の案内図を貰う。ツツジはまだ三分咲きぐらいとのこと。

五大尊つつじ公園には、樹齢300年以上の古木が多数あり、ツツジの種類は10種類、約1万本が植栽されているそうだ。
種類もリュウキュウ、ベニギリ、ヒラドヨドカワ、コチョウなどあまり聞きなれない種類もあるが、残念ながら名札がついていないので、オオムラサキとヤマツツジくらいしかわからない。

境内には札所巡礼拝碑があり、四国八十八ヶ所・西国・坂東・秩父の霊場を回ることができる。
以前は104基しか現存していなかったが、平成になって84基を新たに造り、188ヶ所の写し霊場を完成させた、と入り口でもらったパンフレッとに書いてある。

お堂の前から越生の町が一望できる。今は廃業してしまったが「越生酒造」という蔵元があった。
もう20年も昔の話だが、越生の山を歩いた帰り、たまたま「越生酒造」という古い看板をみつけ、ガラス戸をあけて中に入ってみた。

ガランとした店内には誰もいない。何回か声をかけると、年配のオカミサンらしい人が出てきた。
「どのお酒にしますか」
「初めて来たので、どんなお酒があるのか、わからないのだけど」

するとオカミサンはこういった。
「いつもどんなお酒を飲んでいるの」
「う~ん、急に言われてても・・・・・・・」
「じゃ、剣菱は飲んだことある?」
「ええ、ときどき飲みます。嫌いなお酒ではありません・・・・・」

「それじゃこのお酒にしなさい。〈紫紺〉です。今日は主人がいないか
らお売りするけど、主人は銘柄を言わないと絶対に売りませんよ」
「はい、わかりました・・・・・・」
ということで、たしか1.8Lで4000円近かったと思うが、ザックに入れて帰ってきた。地酒らしい個性の強い酒だった。

それからどういう話の展開か忘れたが、昭和18年に明治神宮外苑競技場で行われた学徒出陣壮行会の話になった。
オカミさんは当時女学校の3年生で、秋の強い雨の中、涙を流しながら出陣する学生を見送ったそうだ。いまご健在なら、91歳~92歳になられるのだろう。

越生の町並みを眺めながら、そんな古い記憶がとめどなく甦ってきた。
この話には続きがあって、その2,3ヶ月後、越生に会社の仲間とゴルフに行き、その帰りに越生酒造に寄った。
「この間〈紫紺〉を買ったけど、ちょっとクセが強い感じがしましたが・・」
「うちは淡麗水の如し、などという水っぽい酒は造らないよ」
仲間の一人が私は下戸で、というと
「酒を買わない人は、外の駐車場で待っていてくれ」
酒の味も個性的だったが、噂にきくご主人も、酒の味に劣らず個性的だった。

ツツジに囲まれた広場で、幼稚園児が楽しそうに食事をしていた。保母さんや随行のお父さん、お母さんたちも楽しそうで、笑い声がここまで聞こえてきた。

ヤマツツジが咲き乱れる山の斜面を眺めながら「無名戦士の墓」に詣でる。石段に腰を下ろしてウイスキー入りの紅茶でパンを食べていると、中年の女性が一人で大きなカメラをぶら下げて登ってきた。
ヒバリがよく鳴いていますね、どこの枝にいるのでしょう、と話しかけてきた。ヒバリはいつも空中で鳴くものと思っていたが、よく聞けば確かにヒバリの鳴き声だ。
ランチをすませウグイスのさえずりを聞きながら、新緑の道を越生駅に向かってフラフラと下っていくと、先ほどの女性が越生七福神のひとつ、正法寺の境内にカメラを向けて、熱心に何かを写していた。
ウグイスが鳴いていますね、と声を掛けようとしたが、なんとなく掛けそびれ、そのまま通り過ぎてしまった。