今年を漢字一文字で表すと?
大切な友人から届いたメールに
書かれていた質問


今年を振り返り

浮かんだ漢字




  信




認知症状が出始めた
父の生きるチカラを信じた

神様は困難だけを与えたりはしない
困難と思うそばには
大切な宝物を一緒に与えてくれていると
体感を通して信じた


目に見える世界も
目に見えない世界も信じることから始まった


一人ひとりの出逢えた皆様との
生きるチカラの愛を感じた




そして自分自身を信じ続けた









2015年9月
ある日仕事のお昼休みに
何件もの着信履歴に不安を覚えた


普段
連絡を取ることのない兄嫁からだった


留守電メッセージを確認した

「もしもし!
のぶちゃんがのぶちゃんが倒れた
お父さんに連絡つかなくて

、、、どうしよう」


震えた半泣き声だった








兄のもとへ行く


苦しそうな呼吸
視点は合わない
左麻痺

右手を握って
「美保だよ!!わかる!?」

返事も手を握り返すことも無かった




10数年前に母が脳梗塞で倒れた経験
それをきっかけに介護の仕事を始めた
沢山の後遺症の方と触れ合ってきた経験



これからまた
兄嫁をサポートしながら兄の介護生活に
全力で向かい合うんだ


そう思っていた







兄の梗塞部分は広範囲だった



翌日
医師から開頭手術の可能性を示唆された



そこに兄嫁の姿はなかった


閉所恐怖症があった
空間だけでなく取り囲まれる状況の中でも
表情に変化が出ることに
後々少しずつ気がついていった




倒れた翌日兄の職場に挨拶に行った
職場で倒れた兄の荷物を預かった為
兄嫁に届けながら医師の話を伝える



ぎりぎりまで待って
脳の浮腫が危険域に膨らむ直前の段階で
連絡がくること
病院から電話があったら
手術をするしないの返事を伝えられるように
すぐにオペが開始される段取りだった



兄嫁は黙っていた


マンション下の駐車場で
車に乗って話していると
兄夫婦の中3の娘が帰ってきた

兄が倒れたことをまだ話していないと言う




倒れて3日目朝8時過ぎだった

兄嫁からの電話が鳴った

その瞬間がいつ訪れるのかも分からないまま
起こる出来事を
その時その時
必死に受け止めていた





電話があったので
病院へ向かいますと


手術は!?



そう聞いても
病院へ行ってから言うとの返事だった



職場に着いたばかりの私は
緊急を伝え
今来たばかりの道を走って駐車場へ向かった





この場所で
職場のデイサービス向かう
看護婦さんに出会った

言葉が出せないほどに
動揺し震えていた私は
すぐにその人に抱きしめられた


背中を擦られ

気をつけて行くのよ!





背中を優しく強く愛を込めて
叩いてくれた




泣きながら頷いて

車に走った





手術着を着た医師達が
まだ答えを待っていた






目の前に起こる出来事

その時その時を
受け止めるだけで精一杯だった





それぞれの想い
無限の世界の中にいた




大切なものは何なのか
向き合い続けた





知ることの出来ない

兄の気持ち





どうしたらいい
どうしてほしい





兄の気持ちを探し求めた





ありとあらゆる映像が
次から次へと頭に浮かぶ



答えを言葉に出さない兄嫁を受け止めながら

今決めなくてはいけない
決められない苦しさと向き合いながら
誰かが言葉にしなければ
いけなかった




医師たちはただ待ち続けるしか出来ない
人を救える人達が
何も出来ずに答えを待っていた苦しみは

計り知れない苦しい時間だったはずだ



病院から電話があってから
どのくらい時間が経ってしまったのか
確認する意識さえもない







沈黙を破ったのは
主治医でない別の医師だった
流れ過ぎた一分一秒の時間の尊さを

苦しさの中で感じていた






「手術をしないのであれば一刻も早く会わせたい人を呼んでください!!!
こうしているうちにもどんどん助かる機能が
失われていってるんですよ!!!」



怒号のような声に




身体中の細胞が逆立つような感覚の中で
裸になって崖の上から飛び降りる覚悟に

いつしか向き合う自分と

戦っていた





暗闇の中にいた
果てしなく遠い光をみていた




いのちと向き合う

兄の心と向き合う






時間のない中で
頭で考えたのではない
苦しみと反比例するかのように
覚悟の中でたどり着いていた確かな決断は




手術をしない選択だった





私はどん底に落ちる
言葉にしたら
奈落の底に落ちていくんだ





恐怖を身にまとって





私が医師に伝えた

歯を食いしばっていた
力いっぱい手を握りしめていた







闇の中に落ちていった



医師はその闇を受け止めながら
相談する人はいないかと聴いてくれた
母を介護する高齢の父にその判断を委ねられなかった

夫しかいなかった
電話の向こうで夫は
俺と同い年だ!助けてやってくれ
そう言った

その言葉を伝えると
医師は安堵の顔になった



でも
私の想いは変わらなかった





医師は後に繰り返し言葉に出してくれた

このことは誰か一人が決めたものではありません
皆で決めたことです

優しい包みこむ声をしっかりど思い出せたのは
ずいぶん月日が流れてからだった

手術後の生活を支えるのは
医師だけでは成り立たない
家族の力が環境が何より必要です



一人で決めたのではありません




そう何度も何度も記憶に残るように

語ってくれた



そして兄が亡くなるのだと
呆然と佇む私の横にいたのは

ただただ黙って
兄を見つめ私と同じ視線を送る
看護婦さんだった





悔しさ苦しさ無力さ
倫理観を抱えながら


その日から




見えるもの全てが
苦しみを映し出した



聴こえるもの
全てが私を刃物になって傷つけてきた









3年以上が過ぎたが
一度も手術をすれば良かったのかと
悔やんだことはない
あの時信じていたものは揺るぎなかった


ただただ自分を責め続けた
この苦しみを創り出した自分を
受け留められなかった

向き合いの日々だった






あの日あの時
全身の細胞が逆立つほどの恐怖の中で





兄を見つめた
自分を信じた
 





正解も不正解もない
答えのない苦しみは





そこに愛だけが存在していたと


愛だったことに向き合い始めたのは
それから1年半近く後のことだった



頭で気づくことが出来ても
何度も何度も苦しみが湧き出てきた






何もかも
忘れてしまおう

そう思っても
身体に残る恐怖は
私を傷つけ
その闇を決して忘れさせてくれなかった





2018年は
その闇を愛で包む奇跡の連続だった






   





これからも
自分自身の闇であり光であり
愛に寄り添いながら

私は私を受け止める







正解不正解のない
答えのない苦しみの世界





答えのない苦しみの世界で
苦しみを探し続けていた






   信




苦しみ探しにピリオドを打てたのは

信じる覚悟を持てたのは

誰もが抱える自分自身の闇を
愛で包み込み
愛を伝えてくれる 
一人ひとりとの出逢いだった


苦しみと向かい合う
お一人お一人の
皆さんの生き方だった





信じることは愛




苦しみの奥にあるもの




全ては


たったひとつに繫がっていった



   





今年を振り返り
2018年が与えてくれた

皆様と出逢えた奇跡に
伝えてくださる生き方に

愛に




心より深く深く感謝申し上げます




2018年最後のページをこの内容で綴るのに
多少なりとも葛藤が無かったわけではありません
私の中でひとつの区切りとして
2018年に想いを記します




2018年の一日いちにちが皆様にとって
愛溢れる時間となりますように





心より精一杯の
感謝と愛を込めて


1年間大切に
お読み下さりありがとうございました

良いお年をお迎えくださいませ



お一人お一人の愛が
大切に繫がって

この地球が愛でいっぱいになります🍀