昨年の12月に
職場のデイサービスの利用者さまが
座ったまま意識消失していた
声掛けしても声掛けしても
返事がない
血圧も測れない
救急車を呼んだ
先が見えない不安の中で
たったひとつを見つめていたとき
手をぎゅっと握ると
チカラいっぱいに握り返してくれた
○○さん!救急車くるからね!
大丈夫だからね!!
そう言葉をかけ続けた
握り合う手のひらから
伝わってきたその方の声なき声
それから二ヶ月後
以前と変わらない姿で戻ってきてくれたのが
今年の2月上旬
あの時のこと覚えていないんだけどな
あんただろ
救急車来るよって声だけ覚えているんだ
そう言ってくださった利用者様
また逢えて
本当に本当に嬉しかった
その後ご自宅でまた意識消失され
入院されたり退院されたりしていましたが
先日誤嚥性肺炎の為旅立たれました
訃報を聴いたとき
寂しさとともに
その寂しさを包み込むような
満たされるような
温かな豊かさを感じました
目を閉じて
ありがとうございましたと祈りました
あの瞬間の経験は
確かに繋がっていたあの体感は
握りあった手のひらが今も覚えている
介護のお仕事をしていると
いろんな方の旅たちを経験します
喫茶店のマスターだった方
九州の探鉱で働いていた方
ご夫婦で同じ施設に入所し
毎日ご主人が奥様のお部屋に
笑顔いっぱいで訪れていた方
早くお迎えが来てほしいと
お寺で頂いた紐で毎日祈りをつぶやく
人工肛門をつけた方
ガンで全身コブが出来ても
凛としてお化粧をし続け
最後の最後まで優しいお顔を崩さなかった方
母の病室の斜向かいの方は
私と同じような年代のご主人様だろうか
私が行くときは必ずといっていいほど
ベットの傍らに座ってみえる
ベットに横たわる奥様は
胃瘻(経管栄養)
食堂に起きることも
笑顔でご主人と会話することもない
口が開きっぱなしなのか
いつもマスクをしてみえる
ご主人が帰り際
黙ったまま奥様の額に手を当てて
優しく撫で気持ちを分かち合っている姿を
お見かけします
私もそっとそっとその空気を感じ
こころを馳せます
職場のデイサービスでのこと
いのちって何?
どうして生きていないといけないの?
教えて!
ある日入浴介助をしていた私に
そう訴えかける利用者さまがいました
近所に奥様が入院しやはり胃瘻になり
ご主人が介護を続けてみえた
でもご主人様はその後
亡くなってしまったのだとか
子供のいない身寄りのない奥様は
どうなってしまうのか
なぜ一緒に逝かせてあげられないのか
何のために生きるのか
湯船に浸かりながら
やりきれない想いを
伝えてくださった利用者様は
9人兄弟の長女
結婚もせず兄弟を母のように育て
両親と何人かの兄弟姉妹も見送ってきた方
それぞれの立場で
だれもが最善と思う選択をしてきた
最善と思うこころで苦しむ
親を看取り兄弟姉妹を看取ってきた
その利用者さまからみえる世界も
最愛の妻のいのちを救う選択をしたご主人も
苦しみながら
精一杯生きる中で向き合った気持ち
私に出来ることは
その生き方を受け止めること
お話を聴かせていただくこと
その人が存在する生きた証を知ること
出逢えた奇跡に感謝すること
いつか旅立つその時は
自分の人生は素晴らしいものだったと
悔いはないとそう思って旅立ちたい
ありがとうを伝えたい
死にたいを口にする方々
もうこんな生活嫌だと口にする方々に
まだ負けないとチカラを振り絞る方々に
ひとときでも
こころ通わせる時間を
生きていることに感謝する時間を
共に感じ合いたい
これからも誇りをもって
介護職を務めていこう
そう思うこの頃の出来事でした
最後まで
大切にお読み下さり
ありがとうございました☆

