運命の人って何だろう...番外編
久しぶりにブログを投稿することにしました。
このシリーズの続きをかくタイミングが来たからです。
前回の運命の人シリーズ最終章から1年以上が経ちました。
月日が経つのは、年齢とともに早く感じるようになります。
と同時に、その日その日を大切に生きようという気持ちも深まるものです。
この記事がAさんとB氏の架け橋となることを願って。。。
①Aさんの病との戦い
最終回でもお話ししましたが、Aさんの体調不良の原因が子宮筋腫であったことが発覚し、治療が開始されたところから始まります。
医師から伝えられた子宮全摘。
Aさんの筋腫は赤ちゃんの頭ほどの大きさになっており、このサイズ感と貧血の重症度から子宮を全摘するほうが良いと判断されました。
Aさんは子宮全摘という最悪の事態を何とか免れようと、生理を止めるお薬と同時に漢方薬で筋腫を小さくする治療を選択しました。
しかしこの治療方法は一時的なものに過ぎません。
彼女はまだ若く、閉経まで先が長いことが想定されました。
したがって薬を止めれば生理が起き、必然的に筋腫も大きくなり、同時に出血により貧血も引き起こされます。薬の効きは強く、抗がん剤と同じような作用をします。それにより薬を飲み続けることができる期間が決まっていました。
決断までの期限は6ヶ月。
それでもAさんは少しでも手術を先延ばしにしたかったのです。
それはなぜか?
B氏との間に赤ちゃんの可能性、そしてそれが無理であったとしても、女として子宮のある状態で彼と一度だけでも結ばれたいという気持ちがあったからでした。
当時の彼女にとって、子宮の無くなった自分は異性からして気持ちの悪いものだと判断され、男女の交わりを拒否されるようになるのではないかという恐怖があったからでした。
Aさんはわずかな可能性に賭けたかったのでした。
半年以内にきっとB氏との進展があるはずだと。
そこから彼女の病との戦いは始まりました。
薬はすぐに効果を出しました。生理が完全に止まったのです。それにより貧血の状態は収まってきました。
ヘモグロビン値が7という状態で退院したAさん。
7という値はまだ輸血が必要なレベルです。しかし彼女は近所のお肉屋さんで苦手なレバーを買い続け、何とか自力でヘモグロビン値13にまであげることができました。
しかし…薬を飲み始めて3ヶ月が経つ頃から、安定すると思われていた体調が突然変化をし始めました。
それは髪の毛が大量に抜けるという症状から始まり、様々な不定愁訴により体調が不安定になっていったのでした。
「ここまでか・・・」
彼女の体は限界の先をもう超えていました。
②夢を諦める決断
「私の夢はお嫁さん!」
サザエさんに出てくるわかめちゃんの夢は確かこのように設定されていたと思います。
この夢はAさんも同じでした。
お金より愛!
それがモットーだった彼女。しかし彼女の夢はことごとく消え去っていきました。ようやくできた彼氏と無事婚約まで至ったものの、結婚式1週間前に夫となる人の元カノが結婚式に出席することが発覚。揉めにもめ、ようやく迎えた結婚式も、その後の結婚生活も散々なものでした。
子供ができればきっと夫ともうまくいくはずと、子作りに積極的ではない夫との間に何とか子を一人授かることができたものの...夫婦関係は良くなることはなく、ますます悪化していきました。結局夫とは離婚することになります。
Aさんが抱いていた幸せな結婚生活は叶えられなかったのです。
そんな行き詰まりを感じていた頃に出会ったのがB氏だったのです。
出会った当初のAさんは「もう恋なんてしない!男なんてうんざり。とにかく自立して自分で幸せを掴むの!」という考えがあったので、B氏との出会いがまさか恋愛にまで発展するなんて想像もしていませんでした。
しかし、ある時B氏がふとAさんと顔を合わせた時、はにかんで俯いた時にAさんは彼が自分に好意があるのではないだろうか?と感じます。それがきっかけとなり、恋に落ちていってしまったのでした。B氏には妻子があることを知っていながら・・・
最初はただそばにいたり、話ができたり、一緒に仕事ができるだけで幸せでした。
ところがB氏のことを知れば知るほどに...彼と一生を添い遂げたいと思うようになります。
そして自分がかつて叶えられなかった幸せな結婚生活を彼と...と思うようになってしまうのでした。そう、それは彼の子供を授かることも含めて。
彼と共に生きていくという事は、全ての罪や罰、償いや世間からのバッシングも含め全てを受け入れるという覚悟をすることです。
そんな大きな覚悟を彼女は心に決め、彼を愛すること、彼との縁を信じることを堅く決めたのでした。
彼はとても家族想いの人という噂がありました。
彼の仕事が深夜までかかる時は、奥様がちゃんと起きて待っていてくれるという、そんなラブラブな関係性であることも知っていました。
そういう彼だから好きになったのか?ではなく、なぜだか根拠はなく、彼がいい。ただそれだけでした。どちらかと言えば、B氏はAさんの理想のタイプの人ではありません。彼女は「お酒を飲む人、タバコを吸う人、ギャンブルをする人」は嫌いでした。ですが彼は全部するのですから。なぜ彼じゃなきゃダメなのかが彼女自身不明でした。
一緒になれなくてもいい。
せめて彼の血を引く子供だけでも欲しい。
それほどまでの、今まで一度も感じたこともない強い思いでした。これは女性としての本能なのかも知れません。
しかしその夢も、いよいよ最終局面を迎えることになったのでした。
壊れた体。もう抗うことはできませんでした。
「神様は彼と私との間に子供は必要ないとおっしゃっている」
Aさんはこの状況を受け入れるしかありませんでした。
彼女が定めていたタイムリミットの6ヶ月を待たずに、夢を諦めるという決断が下されました。
③命ある日々 静かに愛した日々
この頃Aさんがよく聴いていた曲が、あいみょん「愛の花」でした。
歌詞のところどころが彼女の人生とシンクロしていたからでした。
命ある日々
静かに誰かを
愛した日々...
Aさんが生きていたことは奇跡でした。
体が悲鳴を上げる中決断した離婚。
まともに歩けない状況での離婚には相当な恐怖が伴っていたと考えられます。
金銭的に支えてくれる夫と別れ、外で仕事をすることができない状況で子供を抱えて家を飛び出し、住みなれない新天地で出直しの人生をスタートさせたのですから。
おそらくそれでもそれをやってのけることができたのは、彼女の強い決意があったからだと考えられます。
幸せになりたい。。。
ただそれだけを叶えるために。
幸せの定義は人それぞれあると思います。
豊かな暮らしができるだけの充分なお金があること
お金はなくても自然に囲まれて生きる生活
愛する人と家族になること
あなたの幸せは何ですか?
幸せの形に想いをはせることは誰でもできます。
しかしそれをいざ行動に起こそうとすると、人は二の足を踏みます。
なぜなら今ある幸せが壊れて、次の幸せも壊れるかも知れないからです。
ではなぜそれを超えていける人がいるのか?を解き明かしていきましょう。
それは...
底辺を知ったからです。
人は本当の意味でどん底を味合わないと上がっていこうという覚悟ができないのだと筆者は考えています。どん底を味わうと、あとは上がるしかないからです。
こんな人生もう嫌だ!
というところまでやり尽くさないと人は気づけない時があります。
本当はそこに辿り着くまえに気づいて行動を変えれば楽なのに。。。
全てをやり尽くせば、飽きる時が必然的にやってきます。
おそらくAさんもこの恋でやりたいこと、やれることをやり尽くしたのだと思います。それは、命ある日々、命を削りながら何も進展しない静かな状況下で、無条件にB氏を愛し尽くしたということです。
④必然だった手術
拒み続けた手術をAさんはいよいよ決断しました。
決断の理由には、子供のことも関係していました。
彼女の子供は翌年、高校受験を迎えます。彼女の子供には夢があり、将来海外に移住することも視野に入れ、専門科を希望していました。そのため難関高校合格に向け、親のサポートが必要でした。塾の送り迎えや学校行事への参加など、体をフル活用せざるを得ない状況が予想されました。
Aさんは今まで子供の行事は全て一人でしていました。
夫は子供のことには関与してこなかったからでした。したがって一人で全てをやることに大変さは感じていませんでしたが、体力面だけが不安で仕方なかったのです。
ましてやひとり親で実家からも離れ、彼女を助けてくれる人は一人もいませんでした。
「手術は今しかない」
そう思い彼女は梅雨に入る頃、手術の決断をしたのでした。
彼女の担当医は大学病院にも勤めている、腕のいい女医さんでした。
この女医さんの執刀により5時間に渡る子宮全摘手術が全身麻酔で行われました。
立ち合いは両親。
子供は学校。
手術室まではAさんが自分の足で歩いていきます。
手術台の上に自ら上がると酸素マスクがつけられました。
Aさんの心は穏やかでした。部屋に響き渡る心拍数がそれを物語っていました。とてもゆっくりな拍数だったのです。
「今から少しずつ麻酔を入れていきますね。」
そう言われると、Aさんの右側の頭のてっぺんから顔に向かって少しずつ痺れていくのがわかります。そして意識を失っていきました。
目覚めたのはそこから5時間後。
意識が途切れ途切れで残っていました。
手術台から移動されるとき、手術室から集中治療室に運ばれるまでの廊下の電気、そして集中治療室(ICU)に入ってから急な寒気に襲われて体が硬直し、温風を当ててもらったこと...
全ては初めての経験でした。
まさかこの年齢で手術をすることになるなんて想定すらしていなかったと思います。
ですが。。。
Aさんはこの手術が必然であったことをこの後、感じることになります。
⑤デジャブが意味するもの
術後2時間が過ぎたころ、手術のために前日から禁止されていたお水をようやく許可をされ「吸い飲み」を使って水道水を自ら口にしました。
この水のおいしさと、水のありがたさは半端なかったそうですが...きつかったのはお腹の痛み。もちろん、臓器を一つ取り除いたのでその部分の痛みをとるための痛み止めは点滴で受けています。
しかし、腹に開けた傷は、体を動かすたびに痛むのでした。
彼女のお腹の傷は4ヶ所。
筋腫がとても大きかったので、本来なら開腹手術が基本なのですが、彼女の執刀医が傷を少しでも小さくと考えて下さった結果、腹腔鏡手術を選択してくれたのでした。
3ヶ所は5ミリ程度なので痛みはありません。しかし残りの1ヶ所は1.5センチあるため、そこがとにかくお腹に力が入ると痛むのでした。
体を伸ばすと傷が痛むので、姿勢は体を起こした状態でキープされます。
足には血栓予防のためのフットマッサージャーがつけられ足を動かすことが難しく、腕には10分ごとに計測される血圧計が装備され、鼻には酸素を送るチューブが付けられ、胸には心電図を測るためのパッド、指先には酸素濃度を測る装置が付けられています。
Aさんはこの状態を自分で見て、あの時の光景を思い出しました。
それは夫が交通事故にあい、ICUで再会した時の光景でした。
「まさか自分もこんな状態になるなんて...」
あの時は夫と面会ができましたが、今回の彼女は誰一人面会に来ることはありません。昨今の感染症の影響を受けて面会は禁止なのです。身動きが取り辛かろうが、退院まで一人で全てしないといけません。
「私はここでも一人...」
誰にも助けを求めることや、甘えは許されないのでした。
ICUにいる時間は1日間です。
手術は午前中に始まり、夕方にはICUにいたのですが部屋には戻れません。したがって一晩機械に囲まれたICUで過ごさないといけないのでした。
初めての手術なので、24時間体制の看護はありがたい話です。しかし、機械の音で全く寝れない一夜を過ごすことになったのでした。
夜中になると、病室の電気は消灯されます。しかし、婦人科ICUの前にはナースセンターがあり、そこの光は消えることはありませんでした。
起き上がった状態のベットからは煌々と照らされたナースセンターの光、機械に囲まれた部屋の景色......
「ん!!? この光景。。。」
まさにデジャブでした。
Aさんは入院経験は出産時のみで、それ以外の経験はありません。しかし目の前に広がる光景をどこかで見た記憶があったのでした。
「私、ここにいた...」
そして気づくのです。この手術は必然であったのだと。
根拠はないもののかつて子供の頃にも、ふと頭によぎったことのあるこの光景。全くそのままの状況が今まさにそこに存在していたのでした。
人には宿命や運命という決められた人生のブループリントがあるとされています。ですがそこにはその人生を生きている人の自由意志があるとも言われています。
しかしその自由意志によって様々な経路を通ることはできたとしても、抗えない大きな流れの宿命という通過点は必ず通らなくてはいけないのだと彼女はその時気づきました。
「私は宇宙に操作されている。抗っても、逆らえきれない何かがある。だとしたら、私はこの道をただ必死に生きるしかない。」
彼女はこの日、自身が発信しているSNSを投稿しています。あいみょんの「愛の花」からインスピレーションを受けて。
私の夢は全て
全て置いてきたの…
体調不良を抱えた状態での手術。もしかしたら最後の作品になるかもしれないとさえ覚悟した中で作った投稿でした。
しかしこの投稿は最後になることはなく、彼女はその後も自分の使命をまっとうするよう宇宙から促されるのでした。