長い飛行の夜明けとともに、今まで感じた大きさや広さを表すどの言葉を使っても例えることが出来ない山々が眼下に広がり「アメリカ大陸」の凄さを見せつけられた。


ここも私が生きている地球の一部。


逃げ道を探していた。
洗濯物を干しながら見上げた青空に響く飛行機の音。
「ああ、空を飛びたい」
次の瞬間、ポケットから携帯を出し、
「アメリカに行ってきていい?」
気持ちとは裏腹な明るい声を張り上げてみる。
「おう!いいよ、好きに行ってきない」
どんな唐突な話でも、夫は、いつも私の選択を肯定してくれる。


アメリカへ向かうのは初めてではなかったが、ひとり旅は初めてだった。
逃避行というには短すぎる1週間ほどの滞在だったが、往復の時間も含めて1日の全ての時間を自分のためだけに使える贅沢が嬉しかった。


子育ても一段落し、仕事も収入も最高潮、家庭にも不満がない… 


それでも1人になりたいと願う自分がいた。 

自分の力で軌道修正しながら、「順調」な状態まで踏ん張って、1日の大半を家族や仕事に費やし、休むことに罪悪感を持つほどにまで働く自分を肯定し続けた。


人は誰しも二面性を持っている。
その表と裏の顔が違いすぎるほどに、人生を演じている自分から逃げ出したかったのかもしれない。 



ワシントンD.Cから、自由の女神やマンハッタン、ニューヨークの夜景を見ながらのフライト…完全なるおのぼりさんに、現地に住む叔母が何も言わずに付き合ってくれた。 

観光地にはお土産屋さんがあって、ニューヨークの街並みや匂いは東京と似ていた。
息を呑むような夜景には感動したが、壮大に見えた「アメリカ大陸」の現地には、やはり「人」がいた。

帰りの保安検査場で、「このTシャツの飾りは金属になりますか?」と尋ねる私に、
「それは、あなたが一番わかっているでしょ」と微笑む厳つい保安官に、旅の答えをもらったような気がした。

人は誰しも変わりたいと願う時がある。
その思いを叶えるか否かの答えは自分の中にあると。





クローバー ふみサロでエッセイを書いています。