2/13 | 怪談サークル とうもろこしの会

2/13

貧乏に貧乏を重ねる日々。

そろそろ悪いことでもしないと生きていけないのでは、とも思う。
ただ、死ぬほど不器用なのでスリなんか一瞬でバレるだろうし
ケンカも弱いに決まっているのでカツアゲも無理
社会的コミュニケーション能力もからきしなので「家に帰るために千円貸して」などの寸借詐欺も不首尾に終わるのは確実。
チンケな犯罪一つ人並みに出来ないコンプレックスを覚えつつ
「マルチ商法的なことならイケるんじゃないか?」
と天啓のごとく閃く。
これなら、まずマニュアルを一人でゆっくりシコシコと作っていけばよく
陰気な単純作業が好きな僕にはうってつけの犯罪ではないのか。
(陰気な単純作業=ラベル貼りのバイト、しいたけ栽培、RPGで必ず行う各中ボス戦前の経験値強化合宿、怪談など)
下地さえ作ってしまえば、後の実際の運用は人に任せて
そのアガリだけピンハネして暮らしていけば良いのである。
やったぜ。

さっそくPCの前に座って
「一見、お客さんが得しそうだけど、僕一人だけがウハウハ儲かる出資プラン」
のプリントを作成。
ここで詳細を説明して、マネされたり通報されたりすると嫌なのでザックリしたことだけ言うと
まず1万円払ってもらう人を20人ばかし調達し
その20万円を元手に僕が商品を作ってそれを高値で売り
さらにその商品を目当てにする人々からも搾取しようという
ドラッカーも驚く、こんな抜け道があったか!な経営プランである。
さらに、そのプリントを、協力してもらおうと思っている知り合いの家へとFAXで送る流れとなった。
とはいえ、その知り合いは実家住まいの身。
こんな凶悪な犯罪を計画していることが彼の両親にバレたら
しばらく夕飯を作ってもらえなくなってしまうかもしれない。
それは気の毒なので一応連絡してみると
「0時には帰宅する」とのこと。
その時間を待ち、彼がFAXの前に待機したのを確認してから、プリントを送る
という段取りで行けば安全確実であったのだが
ここで一つ、問題が発生。
なにしろ僕がめちゃくちゃ眠くなってしまったのだ。
23時半の時点で限界を察したため
「こんな時間まで起きている60代はいない!」
という確信のもと、FAXを送信したのである。

翌日
その知り合いと会った時
開口一番に言われたのが
「お母さんに見られた」
という言葉だった。
げえ!
凶悪犯罪の予備罪、その決定的な証拠を見られた!
一瞬、目の前が真っ白になる。
しかし、知り合いによると
お母さんは僕の送ったプリントをポイっとテーブルに投げて
「なに? この下らないもの」
そう、言い放ったのだそうだ。
半笑いで。


くっ!