12/5 | 怪談サークル とうもろこしの会

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やけにハキハキと明るいホームレスもいるにはいる。
だが、やはりホームレスというもの、この冬を越せるのかと心配させる位ではいてもらいたいものだ。
そんな中、僕が今一番、暗く重く、死に近いと思う家なき大人がいる。
新橋駅の地下街から銀座線に降りる階段にいる人だ。
ほぼ絶対にいつも、銀座線改札に向かって右隅にうずくまっている。
僕が見てきたホームレスの中でも、グンバツに死にそうな男性であり
その身にまとう死のオーラが強すぎるので、もう死体にしか見えないほどだ。
というか、葬式などで僕が今まで見てきた本当の遺体と比べても
明らかに彼の方が強く“死”の臭いを持っている。
オーラだけで言えば、シスの暗黒面の実在を信じさせる程なので
いっさい超能力を使えなくて、謀略を考える気力も一切ない、
そんなスターウォーズの皇帝を思い浮かべてもらえれば分かりやすいだろうか。
いつも見かけるたびに「あ!今度こそ死んでる!」と思うのだが
新橋駅に行けばまた階段にうずくまっているのだ。
「あれ生きてたんだ!あ!でも今度こそ死んでる!」
そう思わせられ続けて、もう5年以上になる。
でも死なない。
いつまでもお元気でいてください。