11/20
夜の10時に赤羽に集合して、青森県は津軽半島を目指す。
一晩で680kmを走る、弾丸ツアーというやつだ。
本来なら4人で代わる代わる運転するはずだったのだが
タカノさんは後から新幹線で追いかけることになり、
チックは一年半も運転してないから怖いと言い出したため
結局、ほとんどの道のりは僕とコイデさんの二人でこなすこととなった。
それでもさすがに深夜ということもありキツいので
東北に入ったあたり、高速も空いてきたのでチックに交代してもらう。
少し雪と風が強いが、まあ大丈夫だろう。
多少間があいたからって、運転なんてものはすぐに慣れを取り戻すものだ。
嫌がるチックを無理にハンドルを握らせ、サービスエリアから雪風舞う高速に乗り出す。
走行していると、やけにカクンカクンと車体が揺れている。
2,3km走ったところで異変に気付く僕とコイデさん。
車線の変更もおぼつかないし、サイドミラーを見ることもしない。
そして雪の高速なのに急ブレーキを踏むという恐怖運転。
いくら一年半のブランクがあるといっても、これは。
いったい、いつ運転免許をとったのか尋ねてみた。
「一年半前です」
前のめりに固まってハンドルを握りしめながら、チックが答える。
「はい、運転はこれが3回目です」
怒声とも悲鳴ともつかない叫び声が車内に響いた。
外はすでに吹雪といえるほどに強くなっている。
フロントガラスに叩きつける雪の間を縫って、少し先の道路が完全に凍りついているのが見えた。