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三日目。
小泉八雲記念館や
呪いの藁人形の神社や
倉敷の美観地区にある廃墟などに行く。
18時頃に、倉敷から尾道に電車で向かっていると
なんと人身事故が発生した。
「復旧までそうとう時間がかかります」
というアナウンスが流れ、笠岡なる駅で足止めをくらう。
いつまでたっても動かない電車。
駅構内にカブトガニの標本が入ったガラスケースがあったり
「カブトガニの街 笠岡」という塔が駅前に立っていたりするので
どうやらカブトガニが売りのようなのだが
こちらがカブトガニに興味がないし
別にカブトガニが食べれる店が駅前にある訳ではないので
暇も潰せずいかんともしがたい。
駅構内の売店で缶チューハイを何本かたいらげても
まだまだ電車は動かない。
駅前の駐車場でビデオカメラを回し
レンズを自分の方に向けて
「まさかね、こんな広島のこんなとこでね、一時間以上いると思っても見ませんでしたね」
インタビュー形式で録画していたのだが、それでも動かない。
改札の前には足止めを食らった人々。
二十人ほどいる高校生の一団の脇をサラリーマンやOLが右往左往して。
その中で僕は、
駅舎の壁にもたれかかるように座っている、
作業着風ジャンパーの、やさぐれた感じのお爺さんに目つけた。
TaKaRa焼酎ハイボール(レモン味)を片手に近づいていき
いやあ東京から来たんですけど、と話しかける。
「これが昔の中央線とかなら分かりますよ?でも広島ですよ?広島のなんか南の線路で人身事故なんてめったにないですよね?それを旅行中にひきあてるってどういうことですかね?」
すると、お爺さんは意外に上品なものごしで
「そうですか、巡り合わせいうもんがありますからね……」
と言ったかと思うと、そそくさ場所を変えるように駐車場の方へと歩いていった。
まるで缶チューハイを片手の厄介な酔っ払いに絡まれたかのように。
なんだなんだ?
ああいう風体の老人というのは皆、若者と話したがるもんじゃないのか?
それもお互い人身事故で足止めをくらっているという状況で?
ましてや人見知りの僕が酒の勢いを借りて勇気を出して話しかけたのに?
あまつさえ広島の郊外の駅で、東京から来たという
鮮やかピンクのシャツを着たメガネ青年に話しかけられて
なんの質問もなしって、どういうアレなの?
東京でなにが流行っているかも聞かなくてもいいの?
中央の景気がどうなっているのか気にならないの?
イラつきと混乱をさ迷ううちに、
現場復旧のアナウンスが構内に流された。
慌てて2時間前に乗っていた車両にもう一度飛び込む。
そのまま山陽本線を尾道へ向かう。
田園から海沿いへと変わっていく風景を、夜の車窓から眺め続けた。
このままでは、そのうち、いつかきっと、誰からも相手にされなくなる。
小泉八雲記念館や
呪いの藁人形の神社や
倉敷の美観地区にある廃墟などに行く。
18時頃に、倉敷から尾道に電車で向かっていると
なんと人身事故が発生した。
「復旧までそうとう時間がかかります」
というアナウンスが流れ、笠岡なる駅で足止めをくらう。
いつまでたっても動かない電車。
駅構内にカブトガニの標本が入ったガラスケースがあったり
「カブトガニの街 笠岡」という塔が駅前に立っていたりするので
どうやらカブトガニが売りのようなのだが
こちらがカブトガニに興味がないし
別にカブトガニが食べれる店が駅前にある訳ではないので
暇も潰せずいかんともしがたい。
駅構内の売店で缶チューハイを何本かたいらげても
まだまだ電車は動かない。
駅前の駐車場でビデオカメラを回し
レンズを自分の方に向けて
「まさかね、こんな広島のこんなとこでね、一時間以上いると思っても見ませんでしたね」
インタビュー形式で録画していたのだが、それでも動かない。
改札の前には足止めを食らった人々。
二十人ほどいる高校生の一団の脇をサラリーマンやOLが右往左往して。
その中で僕は、
駅舎の壁にもたれかかるように座っている、
作業着風ジャンパーの、やさぐれた感じのお爺さんに目つけた。
TaKaRa焼酎ハイボール(レモン味)を片手に近づいていき
いやあ東京から来たんですけど、と話しかける。
「これが昔の中央線とかなら分かりますよ?でも広島ですよ?広島のなんか南の線路で人身事故なんてめったにないですよね?それを旅行中にひきあてるってどういうことですかね?」
すると、お爺さんは意外に上品なものごしで
「そうですか、巡り合わせいうもんがありますからね……」
と言ったかと思うと、そそくさ場所を変えるように駐車場の方へと歩いていった。
まるで缶チューハイを片手の厄介な酔っ払いに絡まれたかのように。
なんだなんだ?
ああいう風体の老人というのは皆、若者と話したがるもんじゃないのか?
それもお互い人身事故で足止めをくらっているという状況で?
ましてや人見知りの僕が酒の勢いを借りて勇気を出して話しかけたのに?
あまつさえ広島の郊外の駅で、東京から来たという
鮮やかピンクのシャツを着たメガネ青年に話しかけられて
なんの質問もなしって、どういうアレなの?
東京でなにが流行っているかも聞かなくてもいいの?
中央の景気がどうなっているのか気にならないの?
イラつきと混乱をさ迷ううちに、
現場復旧のアナウンスが構内に流された。
慌てて2時間前に乗っていた車両にもう一度飛び込む。
そのまま山陽本線を尾道へ向かう。
田園から海沿いへと変わっていく風景を、夜の車窓から眺め続けた。
このままでは、そのうち、いつかきっと、誰からも相手にされなくなる。