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旅行2日目
いよいよ中国地方に乗り込む。
目指すは松江だ。
日本海側の鉄道から米子に行き、乗り換えをする。
ふらっと掲示板を見ると、境港行きの電車の表示。
ああ、ここから、あの水木しげるの町への電車が出ているのか。
そう思っていると鬼太郎電車というものが到着したので
なんとなくふらふら乗車してしまう。
そうして着いた境港。
水木しげるロードも良かったが
水木しげるロードという一本道以外の静けさっぷりの、これが良かった。
まず人通りの圧倒的な差。
水木ロードでは高円寺パルくらいの人数がいるのだが
他の道には、人影が一切ない。本当に無い。
そしてなぜか、水木ロードでは全くしない磯の香りが、
数メートルだけはずれた路地に入ると、ぷうんと匂ってくる。
異常に静かな港町の、この寂れた雰囲気が
アシスタントのつげ義春に引き継がれていったのかもしれない。
そんな境港の路地をさまよううちに
「下西を働かせよう会 連絡所」というノボリを発見する。
港町の片隅で引きこもるニートの下西を
地元の商店街や漁業組合が何とかして働かせようとしているのだろうか。
しかし下西は働かない。
「なまけ者になりなさい」という水木しげるをプッシュしているだけに
地元の人たちもあまり強く注意することが出来ないのだ。
「下西くん、とりあえず鬼太郎グッズを作るバイトしてみないかな?」
網元の高橋さんですら、そうおずおずと切り出すのが精一杯である。
「ほら、ぬりかべと一反もめんの人形から始めればさ、いいんじゃない?」
紙粘土をこねて5分で終る作業なのだが、しかし下西は働かない。
おばけは死なないし、病気もなんにもないし、下西は働かない。
