9/7 | 怪談サークル とうもろこしの会

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知人から、ボールペンをねだられた。
バイト先からパチってきた、アスクルのボールペンだ。知人は、どうもそのボールペンが大のお気に入りらしく、是非とも譲ってほしいと言ってくる。具体的に言うと「ASKULノック式ゲルインクボールペン(黒)」である。どうせタダで手に入れたものだし、僕にしては気前よく渡してあげることにする。知人の熱意が異常なほどに高かったせいもあるかもしれない。
アスクルのボールペンの中には幾つかのモデルがある。その中で最安値が “油性ボールペン(ノック式)黒”の50円で、ゲルインク型は一本につき8円ほど高い。知人のところもそうだったようだが、この2種類が混在しているオフィスはけっこう多いのではないかと思われる。そして、両者で書き心地や使い勝手が大きく変わってくるのは間違いない。
知人はゲルインクがお気に入りのようだが、僕は従来の油性タイプの方が好きだ。「ASKULノック式油性ボールペン(黒)」のことである。ゲルはインクのノリが良すぎるのだ。Gペンのように線に入り・抜きが出てしまうという点に疑問が残る。我々は電話をメモしているのであって、マンガを描いているのではない。透明でツルツルなデザインも、持った感触としてどことなく心もとなく感じられる。
一方、油性タイプは無骨なデザインが好ましい。透明な方の過剰なインクの出方もない。時によっては筆跡がかすれる程だが、この筆圧を強めにしないといけないインクのノリが、不器用ながらも誠実な印象を与えはしないだろうか。
そして両者の評価の差は、複写の伝票を書く際に決定的となる。透明な方で薄い複写伝票に記入しようとすると、しばしば紙が破れてしまうのだ。もし、それが宛名を書き終わる直前だったとしたら。誰しもが即座にペンを叩き折るだろう。基礎鍛錬を怠った速球投手が肘を故障するのと同じように、インクのノリのよさからペン先を細めたツケが、ここに表われているのだ。
やはり僕としては「ASKULノック式油性ボールペン(黒)」の、どんなに強い筆圧をも紙に反映する、堅実なステアリング性能に高評価を与えたい。とはいえ、もちろん両者のペンにはそれぞれの良さがあることは言い添えておきたい。ゲルインクのスピード感は、オフの日に気軽にものごとを書き付けるのに最適だ。シーンに合わせてタイプを使い分けるのが、本当のアスクルマスターと呼べるのではないだろうか。

といったようなことを、ボールペンをあげる時に知人に熱弁しようと思ったけど、止めておいた。