8/30 | 怪談サークル とうもろこしの会

8/30


だいぶ人と喋っていないせいか、口が回らなくなっている。会話ができないとかじゃなくて、物理的に唇と舌がうまく動かない。ラジオをとって聴きなおしてみたところ、元々悪い滑舌がさらに悪くなっており、これはもはや呂律が回ってないというステージに入ってた。
そういえば最近、独り言が多くなっているかもしれない。いや、確実に多くなっている。しかも昔と違って、半ば無意識に口に出しているようだから厄介。考え事などしていると「ああ、だめだったか」「違うあれ違うよなあちゃ~」「かでしゅ」など、普通に街中の人ごみの中で発していることも多い。これも人と話していないせいだろう。ヤバいな俺。
そんな事もあり、副会長から海に来ないかと誘われた時は少し迷った。彼の関係する海の家が、湘南にあるようだ。しかし考えてみれば、湘南の浜辺を歩くような人に僕が話しかけられる訳もない。結局、隅っこの方で黙って膝を抱えるハメになるだろう。「でも水着ギャルがたくさんいるよ。脱ぐよ」渋る僕に、副会長が畳み掛ける。心が揺らぐ。だが、思い起こせば高校生の時からライブハウスもクラブもレイブイベントも「だいたい女の子が服を脱ぐ」ということを言われてついていった記憶がある。そして、一回もそんなことは起こらなかった。毎回、僕は隅っこの方でただ黙ってただけだった。もう騙されるもんか。
結局、一人でベローチェとゲオとブックオフに行くという、いつもの日常を過ごすことにした。遠くのスピーカーから、選挙に必ず行ってください、という声が聞こえてきた。