ファミレス
ファミレスに一人で行くことが多い。
一人で行って何時間もへらへらしている。
ここ最近、夏休みというやつのせいだろうか
どの時間帯に行っても、家族連れを見かける。
どうしてだろう。
いつも疑問に思う。
どうしてファミレスにいる家族連れのパターンとして
お父さんが断トツに狂っている人ばかりなのだろう。
先日は、食事中にずっと大声で
「ウンコ!ウンコ!」
と怒鳴り続けるお父さんがいた。
隣にいるお母さんがたしなめても止めない。
なんだか義憤に駆られるように、ウンコ話を続けるのだ。
それは、こんなウンコ話だ。
小学生の時、お父さんの同級生に田中という子がいた。
お父さんと田中の二人はよく一緒に遊んでいたのだが、
ある事件を境にして、その関係に亀裂が入ってしまう。
お父さんが、田中と友達でいることを止めたのだ。
ある夏の日、
田中はお父さんの目の前で突然
むしゃむしゃとカブト虫を食べたのだ。
勿論、お父さんはビックリしたが、
その事で田中を嫌いになったのではない。
田中はカブト虫を食べた自分を英雄視したのだろうか。
次の日、田中が意気揚々とこんな自慢をしだしたのだ。
俺、今朝ウンコしたんだ
そん時、尻がチクってしたから
した後のウンコを見てみたらさ
なんとカブト虫の足が入ってたんだぜ!
田中はカブト虫を食べた自分を英雄視したのだろうか。
いくら気持ち悪いから止めろと言っても
その話を何度も何度もしてきたのだという。
「ずーっとウンコウンコって言うんだよ!
止めろっつってんのにさ!ウンコの話ばっか!
人が給食たべてんのに!ウンコ!ウンコ!ウンコ!
って!」
僕の席はかなり離れていたのだが
お父さんの喋り声、そして大声で連呼するウンココールは
かなりはっきりと聞こえてきた。
しかも凄いのが、
お父さんはこれを笑い話として語っているのではなかった。
話しながら、本当に顔を真っ赤にして怒っているのだ。
その声には紛うかたない怒気が含まれていた。
何十年も前にウンコ話をし続けた田中に
今なお色あせぬ怒りを感じているのだ。
僕はトンカツ御膳を残した。