パンク
このところずっとじっとり生暖かい夜が続いて困っていたら、何の前触れもなしに今仁副会長が訪ねてきた。
アパートの部屋のドアをあけるやいなや「これからはパンクですよ!」と変に興奮している。「パンクなんですよパンクパンク」ただでさえ蒸し暑い夜に、うっとうしいことこの上ない。どうも、このタイミングで、しかも齢30を過ぎたというのに、今さらブルーハーツにハマってしまったらしい。
というのは嘘で本当はこう。この副会長くん、昼間に公園にて水たまりのボウフラを何時間も見つめ続けているうちに「だんだん後頭部がジンワリしてきて」、それがピークに達した瞬間に(パンクっぽいことをやると金になるんじゃないか?)という閃きが走ったらしく、そのまま僕の部屋に来ていやらしい商談を説明している。という次第なのだそうだ。しかしまあ副会長という男は思い出したようなタイミングで突飛な金儲け話を持ちかけてくるから凄いと言うかなんというか。ねずみ男が人魚の子供を売り払う算段を話すために鬼太郎ハウスに「キタちゃんキタちゃん」と来るのを想像してもらうと分かりやすいだろうか。
これで僕が「寝ぼけたことばっかり。いつか世間からソッポ向かれるぜ」などとたしなめてあげれば良いのだろうが、いかんせん僕も性格のゲスさでは鬼太郎は鬼太郎でも墓場時代の鬼太郎とそう遜色なく、ただ超能力が使えないだけといった有様(僕の見た目は鬼太郎で言えば吸血鬼エリートだと副会長は主張してきかない)なので「パンク…フヒヒヒ…」「ケーケッケッケ、パンクですよ…」「ヒヒ、儲かりますか…」「ええ、パンクですから…ケケケ…」部屋はすぐに時ならぬ嫌らしい高笑いによって満たされた。そんな二人に説教してくれるような目玉のオヤジは、ここにはいない。
ただ、僕のパンクに対するイメージは「ライブ中に脱ぐ」「ライブ中にウンコをする」くらいしか無いので、それをどうやってオカルト関係に結び付ければいいのか、いや金儲けに結び付けていけばいいのか、それがとんと分からない。
そこで相談なのだが、君たちの周りで「すぐ脱ぐ」「すぐウンコをする」「そのウンコをすぐ食う」みたいな人がいたら、僕たちまで教えてもらえないだろうか?もしくは、皆がイメージする「パンクな人」がいたら、まあ、それでもいい。ミュージシャンでも芸人でもなんでも構わない。紹介してくれたまえ。
※ただ、すぐ殴ってくるような人は怖いからNGな。