小人 | 怪談サークル とうもろこしの会

小人

 

趣味を作った。

今までの僕はといえば、時間はあるのに金とやる気がない典型例のような人間であって、休日も近所のブックオフで買うでもなく立ち読みするでもなく、ただ店内を動物園の白熊みたいに行ったり来たりウロウロして、ぬべんぼーと何時間も過ごした末に「あ、もう夜だ。お酒とご飯にしよう」で1日が終わるといった、まだネットゲームの方が生産的じゃねえ?な日々を過ごしていたのだが。

これは良くないだろう、と、趣味を作った。

朝起きたらすぐにインターネットを立ち上げ、マンガを紹介しているようなサイトを開く。そこで評判の良いものを押さえつつ、お目当ての作品を決める。だいたい10巻前後が望ましい。そして家を出る。そのマンガを全巻揃えるショッピングに出かけるのだ。ここで「単なる大人買いだろ?」と思われたら心外。この買い物を趣味とする上での、厳格なルールがあるのだ。

105円以下でなければ、絶対に買わない」

これより高い値段の本は、幾ら見つけても、絶対に買わないのである。だいたい350円あたりが中古のマンガ単行本の相場だが、相場で見つけて買うことに何の意義があるというのだろうか(いや、ない)。だからこれは大人買いではない。大人はお目当てのマンガが105円より高くても、買っちゃうからだ。これは小人買いだ。経済力として子供ですという意味と、人間がみみっちくて小さいですという意味において、小人買いだと僕は呼ぶ。

こうなると、今までたった1軒のブックオフで過ごしていた休日を、4,5軒回って過ごすことが出来るのである。いや、ブックオフに限らず色々な古本屋を広範囲に探索しなくては、この小人買いは成り立たない。体力・持久力がつく。あと1つで全部揃えられるのに、しかも目の前にその巻があるのに、200円だから諦めるという精神力も培われる。そして全部揃えた時の充実感。たまに惨めな気分になることを除けば、とても素晴らしい趣味だと思うよ、小人買い。