不文律のお約束というか、暗黙の了解の楽しみ方というか。
音月桂さんに関しては、劇団は通例の順序というものを与えるつもりが、本当に全く無いんだな、と思いました。
最後まで。
トップの交代は世代交代、組の生まれ変わり。
カラーも顔ぶれもガラリと変わる。
だから、トップさよなら公演はそのトップ個人の集大成であるばかりでなく、そのトップが率いた時代の組の集大成です。
研1の頃から音月氏を見守ってきたナガさんが専科へ異動になり、大規模な組み換え直後の本公演。
組の転換期の第一歩目。
加えて北翔海莉特出。
ただの専科特出じゃない、スター路線が専科異動後の注目を集める第一回目の特出。

トップさよなら公演は、トップがその道のりを共に歩んだ組子と行う儀式。
そこには個人の旅立ちだけでなく、組の生まれ変わりと伝統の継承があり、それは、トップ=組の神が有終の美を飾る最後の強烈な輝きと、そのトップが率いた組の組としての力が一気に結実するパワーを動力源として行われます。
そのダイナミズムが、宝塚特有のカタルシスを起こし、より、彼女達に刹那の輝きを与える。

話題を集めるのはエンタメとしていいことだけれど、一番大切なことを疎かにしないで欲しいと思います。

尋常じゃない道のりを歩んだ音月体制の雪組だからこその、「約束事」に一切守られない、さよなら公演。

彼女達ならではの底力を見たいと思います。


(続く)