「妙な心地ぞ…目が覚めると庭に日が差しておるのじゃ…花が美しゅう咲いておるのじゃ…そこはかとのう、良い心地になるのじゃ…これでよい、もうこれでよい…政も足利家の行く末も忘れて、これでよいと、そう思うのじゃ」

「わしが手に入れたいと思ったものは、もそっと大きなものじゃ。もそっと美しいものじゃ…。だが庭の花を見て、これでよい、と…」

尊氏…………………(ノ△T)

もう震えがくるほど傑作大河でした、「太平記」…。
某動画サイトで大河ドラマのつまみ食いをしていたところ、神回な最終回と遭遇。
実は主演の真田広之氏は苦手意識があり避けていましたが、そんなこと言ってる場合じゃないとレンタル開始したのが昨秋。
また第一話のクオリティも素晴らしくてね…視聴後、ゲラゲラ笑いながら「なんじゃこりゃ~~ビックリマーク」と突っ伏したのを思い出します。
大事に大事に回を進め、ついに再び最終回まで見納めました。
既に見た最終回がこんなに滲みるとは…。

最終回のクライマックスは尊氏と直義の対峙です。
あまりに悲愴。
この兄弟を「骨肉の争い」「愛憎」と評する書物は多い。
争い合う兄弟は歴史上多いけど、同母腹で超仲良しだったのに…って所が異色だよなぁ。
………………………。
…いかん、浸ってしまう汗
役者&脚本&演出のMiracleパフォーマンスな場面ですが、一話から見続けたら、一層こたえる場面でした…。
全てがさぁ…こんな悲哀に包容されるために繰り広げられてきたなんて…。
尊氏が優柔不断して犠牲を払いまくって何とか死守しようとしたものを自ら握り潰す瞬間…。

まさに「自分自身を殺した」彼は死に場所を求めるように病身を惜し気もなく戦に投じ、…彼の影と言うべき馬之助を失う段では、もう、老いた背中と涙が痛々しくて重すぎる。

「また、生き残ってしもうた…。」

孤独。
愛する人々を手にかけたのは自分。
全てを投げ打って追い求めた夢に届かなかったのは自分。
彼は全ての責任を引き受けている。
孤独に身を浸したまま。

そこまで生ききった尊氏だから、あの科白がこんなに胸を打つんだなぁ。
静かに、優しい哀しい余韻を持って。
この穏やかなシーンが、件の兄弟の壮絶シーン含め他の名場面を圧倒する。
なんて、やるせない安堵と充足。
穏やかな諦観。
真骨頂、なんだろうなぁ…。

複雑難解な南北朝時代を制した足利尊氏、その不可思議な包容力を存分に堪能しました。